2022.07.01

不動産に ブロックチェーン を活用する方法とは?導入事例も紹介

ブロックチェーン といえば、その誕生以来、主として暗号資産取引をはじめとする金融分野で活用されてきました。しかし最近は、それにとどまらず非金融領域での多彩な導入事例が見られるようになってきました。その一つに「不動産業界」があります。

土地や建物にブロックチェーンを活用すると、間取りや修復履歴、所有者の移転履歴や抵当権設定の有無など、不動産のあらゆる情報が一括管理できます。しかも取引にあたっての契約や決済が自動化できるので、売買や賃借の手続きがスピーディーに行えるだけでなく、業者による仲介業務も最小限で済むため手数料が大幅に安くなります。これ以外にもメタバースにおける不動産経営も登場するなど、ブロックチェーンの活用領域は拡大の一途をたどっているため、今後のさらなるイノベーションが大いに期待されます。

そこで今回は、不動産にブロックチェーンを活用する方法や具体的な導入事例についてご紹介します。

不動産と ブロックチェーン は相性がいい

不動産とブロックチェーンの組み合わせと聞いてもイメージが湧かず、どう活用するのかが分かりにくいかもしれません。しかし、この両者は意外と相性がいいのです。

その理由は、ブロックチェーンが、

  1. 改ざん不可能
  2. 高い透明性
  3. トークンの小口化が可能
  4. 自動取引が可能
  5. スピーディーな取引が可能

以上のような特徴を持っているからです。それぞれについて詳しく解説しましょう。

改ざん不可能

ブロックチェーンでは、そこに参加するすべてのコンピュータ(Peer)が、対等な関係でネットワークにつながれています。インターネットに代表される多くの通信はクライアントサーバーという中央集権的管理者が存在し、そこを通してあらゆるユーザーのリクエストが実行に移されます。

ところがブロックチェーンはP2P(Peer to Peer)方式で、すべての端末がサーバーを介さずに繋がっており、ネットワーク上の全取引は、各端末の同意を得なければ更新できない仕組みになっています。データを修正したり入れ替えたりしようとしても、すべての端末の承認がなければできません。よって、ブロックチェーン上での悪意あるデータ改ざんはすぐに明らかとなるため実質不可能といっても過言ではないのです。しかも一部の端末が故障してデータを読み込めなくなっても、他の端末がカバーするため問題ありません。

これら非改ざん性や安全性が、間取りや修繕歴、家賃の支払い状況、また、所有権や抵当権の有無、取引価格といった需要な不動産データの管理にうってつけのため、ブロックチェーンは不動産分野での活用に非常に適しているといえるのです。

高い透明性

ブロックチェーン上では、すべての取引データがブロック内に記録され、それがチェーンのように繋がって永遠に消えることがありません。しかも誰でもそれらのデータを確認できるため、極めて透明性が高いのも特筆すべき特徴です。

これにより過去の取引をはじめとする不動産に関するデータを、立場に関係なくだれでも知ることが可能となります。よって、例えば不動産業者やオーナーは知っているのに、消費者は知らないといった情報の不均衡がなくなり、より平等で安全な取引が担保されるのです。

小口化が可能

ブロックチェーンを使って不動産をデジタルデータ化すると、複数のユーザーによって自由に小口化することができるようになります。例えば、大型の商業ビルやマンションなどを分散所有する場合、大口の資金をもつ大企業や投資家が圧倒的に有利となります。ところが、ブロックチェーンで管理することにより小口化ができれば、一般の個人投資家にも投資機会が与えられるため、市場の活性化が期待できます。

自動取引が可能

後述しますが、不動産取引で活用されるのは、主にイーサリアムやそれに類するブロックチェーンで、スマートコントラクトを搭載しています。スマートコントラクトは、あらかじめプログラムされたルールに従って契約が自動的に実行されるプロトコルのことです。

この機能によって、売買や賃貸契約、代金決済、抵当権の設定など、あらゆる業務が人の手を介さなくとも自動的に行われます。管理者不在の状態で運営できるため、その分手数料も極めて安く抑えることが可能となります。

スピーディーな取引が可能

ブロックチェーンを使えば、クライアントサーバーを介さず、ノードどうしで直接やりとりできるため、非常にスピーディーな取引が実現します。従来の不動産取引は、業務時間内が原則で、夜間や早朝、非営業日は、取引が中断・保留となるのが一般的でした。しかし、ブロックチェーンは、昼夜を問わず、いつでもスマートコントラクトによってプログラムが遂行されるため、24時間・365日業務がとどまることがありません。よって、各種手続きの大幅な時間短縮が期待できます。

不動産に ブロックチェーン を活用する方法

続いて、不動産にブロックチェーンがどの様に活用されるのか、その仕組みを詳しく解説しましょう。

スマートコントラクトの活用

ブロックチェーンのスマートコントラクトを使えば、間取り、居住者の有無、家賃、修復歴など、あらゆる不動産データをトークンと紐づけすることで、管理者が不在でも、台帳としてオンライン上で管理することができます。システムはスマートコントラクトをベースとしたアプリ上で使えるので、送金や登記手続きなど、必要な機能を盛り込めるうえ、端末をつなげばだれでもそのデータにアクセスできます。

これにより、例えば個人間における直接の不動産契約がオンライン上で自動執行され、代金の決済や所有権の移転登記などもすべてブロックチェーン上で完結させることが可能となります。従来のように、売り手や買い手、貸し手や借り手、不動産業者や金融機関の担当者、各役所の職員や司法書士などが、紙媒体の契約書や書類を作成したり、時間をかけて複雑なやり取りをしたり、各種手続きをしたりする必要が、ほぼなくなるということです。

もちろんここまでの体制を作るには、国をトップとして官民挙げてのシステム作りやルール化が必要になります。いきなり完成とはならないまでも、すでに方々で実証実験が数多く繰り返されており、後述するように、一部ではすでにサービスとして導入する動きも見られます。

デジタル証券化する動きも

さらに最近では、国内でも不動産をデジタル証券化してブロックチェーン上で株式のように売買するSTO(Security Token Offering)の実装化に向けた本格的な取り組みが見られます。これは、不動産だけでなく、株式や債券といった有価証券をセキュリティトークンと紐づけて、市場取引の対象とするものです。

ビットコインをはじめとする暗号資産は、資産的裏付けのないユーティリティートークンですが、STOで使うセキュリティトークンは、株式や不動産などによって価値が裏付けられており、金融庁も正式な証券として認めています。この仕組みを可能にするのもスマートコントラクトです。これによって、理論上はブロックチェーン上で土地や建物といった不動産を証券として売買したり、小口化して分散所有したりもできるのです。

ブロックチェーンの活用事例

最後に、不動産取引におけるブロックチェーンの活用事例をご紹介しましょう。

ブロックチェーン 上で不動産取引を完結

米シリコンバレーに本社のある「Propy(プロピー)社」は、不動産取引の自動化サービスを提供する不動産マーケットプレイス運営会社です。

ユーザーは、まるでAmazonで商品を買うごとく、不動産の売買を行うことができます。専用サイトから欲しい物件を選択し、購入希望を出せば、そこから先はほぼ自動的に契約手続きが実行されます。契約書を作成し、電子署名による契約締結が済めば、契約情報はブロックチェーン上に記録、スマートコントラクトによる支払い手続きが完了すると、新たな権利証はブロックチェーン上に記録される、といった具合に、すべてのプロセスがオンライン上で完結します。

ちなみに新たな権利証書は、ブロックチェーンに記録されるだけでなく、自治体でも保管されるので、信頼度や安全性がより高まります。

メタバースでの不動産活用

東京都千代田区に本社をかまえる「ZEISPACE JAPAN」は、現物不動産をメタバース上に再現し、仮想空間内で不動産取引を行っています。

実際にある商業ビルのデジタルインを作り、そこに仮想店舗をオープン、ユーザーはアバターとなってブロックチェーン上でNFT(非代替性トークン)化された商品を自由に試着したり買い物が楽しめたりします。デジタルツインとは、現実世界のデータを双子(ツイン)のようにそっくりなままデジタル空間上に再現する技術です。

不動産オーナーは、各店舗の収益の中から家賃を得ることができるので、コロナ禍により売上げが下がり、空室が増えている厳しい不動産経営をまったく異なるアプローチで支えるスキームとして期待されています。

関連記事:メタバース(Metaverse)とは?注目されている理由や実例・今後の動向を詳しく解説!

まとめ

ブロックチェーンのもつ様々な特徴は、不動産取引の先進的かつ利便性の高いシステム作りに極めて有効です。

不動産は非常に資産性が高く、取引にあたっては動く金額も大きいため、それに伴う手続きは複雑化する傾向が強いです。しかし、暗号資産や金融分野のみならず、食品や物流、医薬など、それ以外の幅広い分野においてもブロックチェーンの活用事例が増えつつあり、いよいよ不動産業界でも本格的に普及していく兆しがあります。

ブロックチェーンと聞くと、暗号資産をめぐる資金洗浄やハッキングといった詐欺事件のイメージが強く、いまだに広く信頼されるにはいたっていません。ただ、これらのダークな事象は、暗号資産取引所がメインフィールドであって、ブロックチェーンそのものは、過去にハッキングされたことが一度もないほど堅牢性と安全性にたけています。

インパクトと実用性のある活用事例が増えれば、これからの不動産業界におけるブロックチェーンの存在もますます注目度が増すでしょう。その意味で、今後の動向からますます目が離せません。

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