ブロックチェーンの将来性 2: ブロックチェーン活用 が期待されている分野 

ブロックチェーン活用

デジタル世界において、Web3.0がいよいよメインストリームとして脚光を浴びつつある中、世の中のあらゆるジャンルで ブロックチェーン活用 が、模索されています。透明性、安全性、非改ざん性、さらに安価でスピーディーな取引が難なく行えるとあって、ブロックチェーンに寄せられる期待と可能性は、無限大といっても過言ではありません。 

そこで今回は、ブロックチェーンの実装が期待されている分野を「政府」「社会」「環境」の3つに分けて解説します。 

1. 政府課題の解決 

世界各国の政府間や国内にある課題解決の切り札としてブロックチェーンは大いに期待されています。「国際送金」「納税」「インフラ」の3つの分野について詳しく解説しましょう。 

国際送金  

国際送金をする際、多くの場合、1973年に設立されたSWIFT(スウィフト)という国際決済システムを利用する必要があります。ところが実際に送金するとなると、複数の金融機関を経て相手国の指定口座に入金するので、高い手数料が必要なうえ、3日以上の時間を要するのが常識となっています。 

にもかかわらず約50年間利用されてきたこのシステムに代わるものがないため、いまだに絶対的な存在感を持ち続けています。その証拠に2022年ウクライナへ侵攻したロシアに経済制裁を与えるために国際社会がSWIFTからの排除を決めると、一部マスコミではこれを「金融版核兵器」と表現しました。それくらい圧倒的な存在ということです。 

このSWIFTに代わるシステムとして注目されているのが、ブロックチェーンです。ブロックチェーンなら、金融機関を経由する必要がないため、ロケーションに関係なくわずか数秒で送金が完了。世界に25億人いると言われる口座を持てない人たちとの間でも送金が可能となります。スマートコントラクトを使えば、送金以外にも様々な金融サービスを付与できるので、その意義の大きさは計り知れません。 

納税 

理論的に国際送金が可能なのですから、ブロックチェーンを活用した国内における納税もシステム上は不可能ではない、と考えてよいでしょう。銀行やATMで振り込むとなると、わざわざお金を持って出向く必要がありますし、時間や曜日によっては振り込めなかったり、手数料が余分にかかったりすることも考えられます。 

その点、ブロックチェーンなら、金融機関を介さず、時間にも場所にも縛られずにいつでもスピーディーな送金が可能です。もちろん誰が、いつ、いくら納税したかは全て記録され、永遠に消滅することも書き換えられることもないため、納税にはうってつけの安全で確実なシステムといえるでしょう。ただし一気に全国で導入するのは、物理的にも予算の上でもハードルが高過ぎるため、地域や特定の自治体を対象に試験的に始めてみるのが現実的と考えられます。 

インフラ 

上記の2例を見ても、ブロックチェーンの社会インフラとしての可能性は果てしなく大きいといってよいでしょう。他にも例えば、日本では新型コロナウィルスに関わる給付金の支給が遅々として進まず、かなり非難されました。しかしすでに全国民の個人情報をブロックチェーンで管理しているエストニアでは、わずか2週間で対象者への支給が完了しました。 

そう考えると、毎月の老齢年金支給、公共料金の支払い、あらゆる寄付や募金なども、ブロックチェーンを活用すれば、金融機関を介さず安全かつ確実に、そしてスピーディーに送金できるので、時間も手間も大幅に削減できるに違いありません。 

ブロックチェーンの将来性 2: ブロックチェーン活用 が期待されている分野

2. 社会的課題の解決 

続いては、民間も含めた社会課題のソリューションとしてブロックチェーンの活用が期待されている分野を紹介しましょう。 

食品のトレーサビリティ 

食品のトレーサビリティを目的とするブロックチェーン活用の輪が、欧米を中心として急速に広がっています。原材料の産地、生産・加工された工場、梱包・出荷を行った物流倉庫、卸業者や小売店に至るまで、生産と販売に関わった全プロセスを一気通貫で追跡していくのです。 

中央集権的存在がなく、全てのノードがサーバーとなって同じ情報を管理・共有するため、食の安全を確保し、食中毒や異物混入・盗難などの犯罪が発生した場合でも、原因の究明がスピーディーかつ確実に果たせるようになります。もちろんそれらトラブルや不正行為に対する抑止力としての役割も絶大です。 

検査プロセスの合理化 

ブロックチェーン活用 が大いに期待されている業界の一つが、物流です。食品同様、荷物の追跡ができれば、サプライチェーン上のあらゆるリスクに柔軟に対応できます。 

国際貿易や越境ECにおいて頻繁に問題となるのが、荷物に関する情報の偽装や不正な書き換えです。国外で一つの商品が製造され、梱包のうえ、倉庫や空港、港湾を経由して国内の消費者に届くまでのプロセスは、決して単純なものではありません。メーカーや卸業者のみならず、複数の運送業者や倉庫業者、フォワーダーの手を介して入国する工程は、事務手続きも含めて極めて繁雑といってよいでしょう。裏を返せば、全ての経緯を一貫して監視する存在が不在なために、偽装や書き換えといった不正行為の温床ともなり得るのです。 

そこでブロックチェーンを使えば、原産国、生産工場、生産日、製造責任者、配送業者、経由した空港や港湾に至るまでエンドトゥエンドで追跡のうえ、全関係者で共有することが可能となります。そうすると、荷物の中身や情報についての検査プロセスは、大幅に合理化することができます。 

企業価値や商品価値を高め、顧客やステークホルダーからの高い信頼を獲得するために、すでに世界の大手ECプラットフォーマーや製造業者の中には、物流業者とタッグを組んでブロックチェーンを大々的に活用し始めている例が少なくありません。 

教育 

卒業証明、履修履歴、研究履歴や受賞実績など、教育機関における個人の記録をブロックチェーンで管理する取り組みもすでに海外では始まっています。すると、学歴や経歴の詐称を抑えることができるので、企業やその他の団体にとっては、学生を採用する際の信頼性の高い証明として活用できるでしょう。 

論文や著作物もトークンを使ってデジタル管理すれば、不正に乱用されたり盗作に使われたりするリスクを抑えることも可能です。 

ワクチン 

新型コロナウィルスの流行で世界的に注目されるようになったワクチンパスポート。これもブロックチェーンを使って発行することができます。医療機関と自治体、空港や公共施設、イベント会場などで連携し、アプリ形式にしてスマホで利用できるようにすると、訪問先で陰性証明ができます。 

ブロックチェーンの暗号技術を使えば、必要最低限の個人情報以外、例えば基礎疾患の内容やアレルギー情報などは第三者が閲覧できないようにすることができるので、漏洩リスクをなくすことも可能です。 

3. 環境問題の解決 

環境保全の分野でもブロックチェーンの活用が進んでいます。ブロックチェーンによって、取引の迅速性、透明性、安全性が確保されれば、持続可能な社会の構築に大きく役立つと考えられます。エネルギー使用の最適化、リサイクル、森林破壊の撲滅など、さまざまな例について見ていきましょう。 

エネルギー 

電気事業者ではなく、個人や企業が太陽光発電による余剰電力の売買ができるようになって久しくなります。その仕組みは、電力会社が中央管理者となって売り手から買った電力を需要家に売るというものです。 

しかしこれでは、電力会社の管理下でしか取引ができず、真の意味での自由化とは言い難いものがあります。そこでブロックチェーンを使えば、売り手と買い手のすべてのパソコンがP2Pによって1対1でつながり、直接売り買いできるようになります。取引データは、すべてブロック上に残り、各パソコンから確認できるため、安全性と透明性が確保されます。 

ただ従来のブロックチェーンでは、ブロックの生成者を高性能なコンピューターによる高度な計算を行うマイニングの速さによって決定するプロセスがありました。ところが現在、国内の三菱電機と東京工業大学の共同研究により、少ない計算で余剰電力取引を最適化できる分散型アルゴリズムが開発されました。これにより、それぞれの需要量と供給可能量を考慮したうえ、最適な組み合わせを探索して取引を成立させることが可能となったのです。しかもマイニングを抑えることで、大量に必要となる電力量の削減と脱炭素効果も期待できます。 

このシステムが実装されれば、時間や場所に関係なく、電力の売買が個人や企業間で自由に行え、なおかつ価格も安定するので、再生可能エネルギーの普及にも寄与すると考えられます。 

リサイクル 

プラスチックやペットボトルなどのリサイクルでは、使用済みの資源を回収してから、洗浄、仕分け、粉砕、再生処理、再商品化といった工程が非常に繁雑です。よって、回収した資源がどれだけ効率よくリサイクルに活用されているかを正確に把握することが、容易ではありません。 

そこで、環境負荷低減の効果や最大限の持続可能性を追求するためには、リサイクル資源のトレーサビリティ(追跡)が有効です。しかもブロックチェーンを活用すれば、各工程におけるデータを一元管理できるため、現状把握だけでなく、持続可能性をより高めるリサイクル方法の開発にも役立つと考えられます。 

農業の効率化  

農作物は、国内のみならず海外へ輸出される機会も大変多くあります。消費者に届くまでには、商社やブローカー、空港、物流業者、卸業者、小売店とさまざまな業者を経由します。生鮮食品は傷つきやすく、温度や湿度などの輸送環境によって、その保存状態は大きく左右されます。その反面、商品価値が低下しても、責任の所在が明確にできない点が大きな課題でした。 

そこでブロックチェーンによるトレーサビリティが可能となれば、より安全で安心な精度の高いサプライチェーンの構築に役立つでしょう。 

森林破壊の撲滅 

国内外を問わず、違法な森林伐採は、さまざまな地域で深刻化しています。一度伐採してしまえば、木材の出所はわからなくなるため、違法木材と気づかずに市場に出回ることが少なくありません。 

そこでブロックチェーンを活用し、合法的に伐採された木材のトレーサビリティが可能となれば、その工程に入り込めない違法木材は自ずとより分けられ、市場から排除されると期待できます。 

まとめ 

透明性や非改ざん性、迅速性、堅牢性とブロックチェーンの持ち合わせる機能は、明確かつ画期的で、他のシステムにはない魅力と将来性に満ちています。 

これをどのようなシチュエーションと用途で活用できるかを見極め、国や自治体、企業、さらに個人がいかにパートナーシップを組みながら最適な形でシステムとして導入できるかが、焦点となります。 

あらゆる分野でブロックチェーンの導入は確実に広がっています。さまざまな実証実験も行われていますが、これらの動きがさらに活発化し、クリティカルマス(臨界点)に達すれば、ある時期をもって、業界や地域の垣根を超えて一気に広がりを見せる可能性は十分に期待できます。その時が、いよいよWEB3.0の本番といえるでしょう。