暗号資産の取引市場において、取引所は非常に重要な役割を果たしていますが、大きく分けて2つのタイプがあります。それが、中央集権型取引所(CEX)と 分散型取引所(DEX) です。CEXは、便利で使いやすく、取引のスピードも速い一方で、取引所がユーザーの資産を管理するため、一定のリスクを伴います。一方、DEXは、ユーザーが自分の資産を管理し、自由な取引が可能で、プライバシーも重視されますが、スマートコントラクトに依存するため技術的なリスクもあります。本記事では、CEXとDEXの長所・短所や仕組みを詳しく比較し、それぞれの特徴を解説します。
中央集権型取引所(CEX)
中央集権型取引所(CEX)とは?
中央集権型取引所(Centralized Exchange, CEX) は、暗号資産(仮想通貨)の売買を行うための取引プラットフォームの一つで、第三者機関(運営会社)が取引の管理や仲介を行います。この形式は、従来の金融市場における証券取引所と類似しています。
CEXの代表例としては、Binance、Coinbase、Kraken、KuCoin、OKX、Bybit、Crypto.comが挙げられます。
中央集権型取引所(CEX)の仕組み
中央集権型取引所(CEX)の仕組み は、「主に オーダーブック(注文板)」 を使って動いています。これを簡単に説明すると、次のような流れです:
1. 注文の仕組み
- ユーザーは、「この価格で買いたい」または「この価格で売りたい」という希望を出します。
- これらの注文が「オーダーブック」と呼ばれるリストに記録されます。
2.注文のマッチング
- 買いたい人 と 売りたい人 の価格が一致すると、自動的に取引が成立します。
- 例:Aさんが1BTCを500万円で売りたいと希望し、Bさんが1BTCを500万円で買いたい場合、取引が成立します。
3.市場価格の決まり方
- オーダーブックに登録されている「買いたい価格」や「売りたい価格」の情報をもとに、市場価格が変動します。
- たくさんの人が「高い価格で買いたい」と注文を出すと価格が上がり、逆に「安い価格で売りたい」注文が多いと価格が下がります。
4.CEXの役割
- 中央集権型取引所は、注文をマッチングするだけでなく、自分自身が「売り手」または「買い手」として市場に参加することもあります。
- これを「マーケットメイカー」と呼び、取引を活発化させたり、スムーズに進めたりするための流動性を提供しています。
中央集権型取引所(CEX)の長所
CEXは、ユーザーに様々な利便性を提供するため、多くの暗号資産トレーダーや投資家にとって利用しやすいプラットフォームとなっています。以下に、CEXの具体的な長所を詳しく説明します。
① 高い流動性
CEXは多くのユーザーが取引を行うため、流動性が非常に高いことが特徴です。特に大規模な取引所(例: Binance、Coinbase)は、日々膨大な取引が行われており、これにより以下の利点が生まれます:
- 低スプレッド: 売買の注文が多いため、買値と売値の差が小さく、トレーダーにとって有利な条件で取引が行えます。
- 大口取引対応: 大量の暗号資産を一度に取引する場合でも、価格に大きな影響を与えずに取引を完了できるため、機関投資家やプロのトレーダーにとって魅力的です。
② 使いやすいインターフェース
CEXはユーザーフレンドリーなインターフェースを提供しており、初心者でも直感的に利用できます。以下の点で、ユーザー体験が優れています:
- シンプルな操作性: 購入、売却、入金、出金などの基本的な操作が簡単で、数クリックで完了できます。
- トレーディングツールの充実: 高度なチャート、価格アラート、指値注文や逆指値注文など、経験豊富なトレーダー向けの機能も充実しています。
③ 法定通貨と暗号資産の交換が容易
多くのCEXは、ユーザーが法定通貨(例: 米ドル、ユーロ、日本円)を使って直接暗号資産を購入できる機能を提供しています。これにより、次のようなメリットがあります:
- クレジットカードや銀行振込対応: クレジットカード、デビットカード、銀行振込を通じて簡単に資金を入金でき、初心者でもすぐに暗号資産の購入が可能です。
- 複数の支払いオプション: 一部のCEXでは、Apple PayやPayPalなどの他の支払いオプションも利用可能で、利便性がさらに向上しています。
④ 多様な取引ペアと金融サービス
CEXでは、ビットコインやイーサリアムをはじめとした多くの暗号資産の取引が可能です。また、他にも次のような金融サービスを提供しています:
- ステーキングとレンディング: ユーザーは保有している暗号資産をステーキングして報酬を得たり、レンディングプラットフォームを通じて他のユーザーに貸し出し利息を得ることができます。
- デリバティブ取引: 先物取引やオプション取引など、より複雑な金融商品を提供し、トレーダーに多様な取引の選択肢を提供しています。
⑤ セキュリティと保険の提供
大手のCEXは、ユーザー資産のセキュリティを高めるために多くのリソースを投入しています。これには次のような具体的な措置が含まれます:
- コールドウォレット管理: 顧客資産の大部分をコールドウォレットに保管し、ハッキングリスクを低減します。
- 二要素認証(2FA): アカウントにアクセスする際に追加の認証手段を設け、セキュリティを強化しています。
- 保険による資産保護: 一部のCEXは、ハッキングやセキュリティ事故が発生した場合に備えて、顧客資産を保険でカバーする仕組みを導入していることがあります。
⑥ カスタマーサポートの充実
CEXは、ユーザーが直面する可能性のある問題に対応するため、専用のカスタマーサポートチームを設置しています。サポートの例としては:
- チャットサポートやメールサポート: 問題が発生した場合、即座にサポートを受けられる体制を整えています。多くのCEXは24時間体制でサポートを提供します。
- FAQやガイドの提供: 初心者向けに、取引の方法やアカウントの設定方法を分かりやすく説明するガイドやチュートリアルも提供されており、サポートが充実しています。
7. 規制に準拠した運営
CEXは、多くの国で法的な規制を遵守して運営されており、これにより次のようなメリットがあります:
- コンプライアンスによる信頼性: CEXはしばしば厳しい規制のもとで運営されているため、ユーザーにとって信頼性が高く、安心して利用できます。
- ライセンス取得済み: 一部のCEXは、特定の地域や国で金融ライセンスを取得しており、法的に認められた取引所として活動しています。
中央集権型取引所(CEX)の短所
CEX(中央集権型取引所)には多くの利点がある一方で、いくつかの短所やリスクも存在します。以下にCEXの主な短所を詳しく説明します。
① ハッキングリスク
CEXは一元的に大量のユーザー資産を管理しているため、ハッカーのターゲットになりやすいです。これまでにも、以下のような事例が見られました:
- 過去の大規模ハッキング事件: Mt.GoxやCoincheckなど、多くの有名取引所がハッキングされ、ユーザー資産が流出したことがあります。
- オンラインウォレットの脆弱性: 多くのCEXはユーザーの資産をオンラインで管理しているため、セキュリティが突破された場合には、ユーザーの資産が盗まれるリスクがあります。
② 資産管理権の喪失
CEXを利用する際、ユーザーは資産を取引所に預けますが、このことには次のようなリスクが伴います:
- 取引所の信頼に依存: 取引所が資産を管理しているため、ユーザーは取引所に完全に依存することになります。取引所のシステムトラブルや破綻が発生した場合、資産が凍結されたり失われるリスクがあります。
- 自己管理ができない: DEXと違い、ユーザーは自分のプライベートキーを保持しないため、資産の管理権限を完全に失ってしまいます。
③ 規制や政府の影響を受けやすい
CEXは政府や規制当局の管轄下にあるため、規制の変更や法的措置に従わざるを得ません。これには以下の問題があります:
- 資産の凍結リスク: 特定の国や地域で規制が厳しくなった場合、取引所がユーザーの資産を凍結したり、取引を停止することがあります。
- KYCの義務: 多くのCEXでは、KYC(顧客確認)プロセスを通じて個人情報の提出が義務付けられ、匿名性が損なわれることがあります。また、KYCを拒否するとサービスが制限される場合もあります。
④ 手数料が高い場合がある
CEXは、取引や入出金に対して手数料を課すことが一般的です。特に、次の点が問題になることがあります:
- 取引手数料: 取引ごとに手数料が発生し、頻繁に取引を行うトレーダーにとってはコストがかさむことがあります。
- 入出金手数料: 特に法定通貨を出金する際の手数料が高い場合があり、資金を引き出すコストがユーザーにとって負担となることがあります。
⑤ プライバシーの欠如
CEXは法規制に従うため、個人情報を収集し、場合によっては政府や第三者に提供する必要があります。具体的には:
- KYC/AML要件: 多くのCEXは、マネーロンダリング防止(AML)や顧客確認(KYC)のためにユーザーから詳細な個人情報を収集します。これにより、ユーザーは自分のプライバシーが守られないと感じる場合があります。
- データ漏洩リスク: 大量の個人情報が取引所に保存されているため、データ漏洩のリスクが存在します。もしハッキングやシステムの不備により情報が漏洩すると、ユーザーの個人情報が悪用される可能性があります。
⑥ 取引の中央集権的なコントロール
CEXは取引所自体が取引を管理・運営しているため、ユーザーが取引の仕組みを完全にコントロールできません。これには以下のようなデメリットがあります:
- 取引停止のリスク: 市場の急変時やシステムメンテナンス時に、取引所が一時的に取引を停止することがあります。これにより、急な相場変動に対応できないリスクがあります。
- 取引手数料の調整: CEXは取引手数料を一方的に変更でき、ユーザーが高い手数料を負担する状況が発生することがあります。
7. 分散型金融(DeFi)との相性が悪い
CEXは中央集権的な構造を持っているため、DeFi(分散型金融)との相性が悪いです。次のような点で、DeFiユーザーにとって不便に感じることがあります:
- スマートコントラクトの利用が制限される: CEXでは、DeFiに必要なスマートコントラクトや流動性提供などの機能が限られているため、分散型取引の自由度が低いです。
- トークン管理が制限される: CEXでは、すべてのトークンが上場されているわけではなく、特定のDeFiトークンやNFTの取引が難しい場合があります。
分散型取引所(DEX)
分散型取引所(DEX)とは?
分散型取引所(Decentralized Exchange, DEX)とは、ブロックチェーン技術を基盤にした取引所のことです。ユーザーは、この仕組みを利用して、仲介者を介さずに直接トークンを取引できます。つまり、第三者に頼らずに、安全かつ自由に取引を行える特徴があります。
DEXには、Uniswap、PancakeSwap、Curve、1inch、Sushiswapなどが含まれます。
>>>関連記事:DEX (分散型取引所)とは?メリットとデメリット、CEX(中央集権型取引所)との違いも詳しく解説!
分散型取引所(DEX)の仕組み
分散型取引所(DEX) では、すべての取引が自動化された仕組みにより、ユーザー同士が直接(ピアツーピア)で取引を行います。この仕組みの特徴は、第三者や仲介者に依存せずに取引ができる点です。ユーザーは資金を自分で完全に管理できるため、取引や資金管理において仲介者を必要とせず、セキュリティ上のリスク(ハッキングや詐欺など)を大幅に軽減できます。また、DEXでは、資金の流れをコントロールしたり税金を徴収することが非常に難しいという側面もあります。
1.自動的な取引
DEXでは、自動マーケットメイカー(AMM) という仕組みを使うことが多いです。これにより、取引所が提供する「流動性プール」を利用して、希望する価格で暗号資産を買ったり売ったりできます。
2.注文板(オーダーブック)も一部利用
一部のDEXは、中央集権型取引所(CEX)と同じような「オーダーブック(買いたい・売りたい価格を並べたリスト)」を使っていますが、多くの場合はAMMを採用しています。
3.トークンの仕組み
DEXでは、「プロキシトークン」という代表トークンを発行して、異なる通貨や暗号資産を交換できる仕組みを作っています。
4.CEXとDEXの簡単な例
- CEXの場合
レストランに行って注文を出し、店員(取引所)が間に入って料理を提供します。
→ この場合、店員を信頼する必要があります。 - DEXの場合
フリーマーケットで、直接相手と交渉して商品を交換します。
→ 仲介者がいないので、やり取りはすべて自分の責任です。
DEXの長所
① 資産管理権の保持
DEXを利用する最大のメリットの一つは、ユーザーが自分の資産の管理権を完全に保持できることです。具体的な利点は次の通りです:
- プライベートキーの保有: DEXでは、ユーザーが自分のプライベートキーを管理し、資産は常に自分のウォレットに保管されます。取引が完了するまで資産は取引所に移されないため、取引所の破綻やハッキングによるリスクが減少します。
- 自己主権型の取引: ユーザーは自分の資産に対して常に完全なコントロールを持っており、中央集権的な取引所のように第三者に依存しない取引を行えます。
② 匿名性の確保
DEXはユーザーの匿名性を高める特徴があります。これには以下の利点があります:
- KYC不要: 多くのDEXでは、取引を行う際にKYC(顧客確認手続き)が不要です。そのため、個人情報を取引所に提供する必要がなく、プライバシーが守られます。
- 取引履歴の追跡困難: DEXでの取引はブロックチェーン上に記録されるため、個々の取引は公開されていますが、ウォレットアドレスに個人情報が紐づけられていないため、特定のユーザーを識別するのが難しくなります。
③ 規制の影響を受けにくい
DEXは分散型であるため、特定の国や政府の規制や制約に影響されにくいです。これにより、以下のメリットがあります:
- 取引停止のリスク低減: 政府や規制当局の介入によって取引が停止されるリスクが低く、自由な取引が可能です。特定の国や地域で法規制が強化されても、DEXの運営は続けられることが一般的です。
- 国境を越えた取引の自由: DEXは世界中のどこからでもアクセスでき、国境を越えた取引が可能です。ユーザーはどの地域にいても平等に取引に参加できます。
④ 分散型金融(DeFi)との高い互換性
DEXはDeFi(分散型金融)のエコシステムと深く結びついており、次のような利点を提供しています:
- スマートコントラクトの活用: DEXは、取引を自動化するためにスマートコントラクトを使用しています。これにより、中央集権的な管理者なしで取引が自動的に実行され、信頼できる第三者を介さずに取引が可能です。
- 新しいトークンやプロジェクトへのアクセス: DEXは、上場手続きが簡単なため、新しいトークンやプロジェクトが迅速に取引される傾向があります。これにより、ユーザーは早期に新しいプロジェクトにアクセスできる機会が増えます。
⑤ 取引手数料が低い場合が多い
DEXは、多くの場合CEXよりも取引手数料が低く設定されています。これは、中央の運営主体がなく、中間手数料が発生しにくいためです。また、次のような要素も手数料を抑える要因です:
- 仲介者がいない: CEXでは取引の仲介者として取引所が存在しますが、DEXではユーザー間で直接取引が行われるため、余計な手数料が発生しません。
- ガス代最適化: 一部のDEXは、レイヤー2ソリューションやガス代最適化の技術を導入しており、ユーザーが支払う手数料をさらに抑えることができます。
⑥ 透明性の高さ
DEXはブロックチェーン上で運営されているため、取引履歴や流動性の状況が誰にでも公開されており、非常に透明性が高いです。具体的には:
- 取引内容の可視化: すべての取引はブロックチェーンに記録され、ユーザーはその記録を自由に確認できます。これにより、不正や操作のない透明な取引が保証されます。
- スマートコントラクトのコード公開: 多くのDEXでは、スマートコントラクトのコードがオープンソースで公開されており、セキュリティや機能が誰でも確認できるようになっています。
⑦ ダウンタイムが少ない
CEXは、システム障害やメンテナンスによって取引が一時停止することがありますが、DEXは分散型であるため、特定のサーバーやシステムに依存しません。これにより:
- 取引の継続性: サーバー障害やメンテナンスが発生しにくく、取引が24時間365日途切れることなく継続される傾向があります。
⑧ ユーザー主導のガバナンス
一部のDEXでは、ユーザーが取引所の運営方針やアップグレードに関する決定に関与できるガバナンスシステムを導入しています。これには次のような利点があります:
- コミュニティの参加: ユーザーはガバナンストークンを使って投票し、DEXの運営に参加することができ、プラットフォームの方向性に影響を与えることが可能です。
- 分散型の意思決定: ガバナンスプロセスは分散されており、中央集権的なリーダーに依存するのではなく、コミュニティ全体で決定が行われるため、公平性が保たれます。
DEXの短所
DEXは多くの長所がありますが、いくつかの短所や課題もあります。
① 流動性の不足
CEXに比べて、DEXは流動性が低い場合が多いです。これには以下のデメリットが伴います:
- スリッページの発生: 取引量が少ないため、大量の注文を出すと価格が大きく変動してしまうことがあり、望んでいた価格で取引ができないことがあります(スリッページ)。
- 取引成立の遅延: 流動性が低い場合、売り手と買い手がすぐに一致せず、取引の成立が遅れることがあります。
② ユーザーインターフェースの複雑さ
DEXはCEXに比べて、技術的な知識が必要な場合があり、特に初心者にとっては使いづらいことがあります。具体的には:
- ウォレット管理の難しさ: DEXではユーザーが自分のウォレットを管理し、プライベートキーを保管する必要があります。これができないと資産を失うリスクが高まります。
- 取引プロセスが複雑: 取引に関する知識や、スマートコントラクトの理解が必要なため、慣れていないユーザーにとっては難解に感じることがあります。
③ ガス代(取引手数料)が高くなる場合がある
特にEthereumベースのDEXでは、ネットワークが混雑するとガス代(取引手数料)が非常に高くなることがあります。これには次のようなデメリットがあります:
- 小額取引が不利: ガス代が高いため、小額の取引では手数料が取引額に対して大きな割合を占め、非効率的になります。
- ネットワークの混雑: 高いガス代は、ネットワークが混雑する原因ともなり、トランザクションの承認待ちが長くなることもあります。
④ スマートコントラクトのバグや脆弱性
DEXはスマートコントラクトによって運営されていますが、スマートコントラクトにバグや脆弱性がある場合、これが悪用される可能性があります。
- ハッキングリスク: スマートコントラクトのコードに脆弱性があると、ハッカーがその弱点を突いて資金を盗む可能性があります。過去にも多くのDeFiプロジェクトでこのような被害が発生しています。
- コードの変更が困難: スマートコントラクトは一度デプロイされると変更が難しいため、バグが発見された場合でもすぐに修正できないことがあります。
⑤ 法的保護やサポートの欠如
CEXでは、法規制の下で運営されるため、ユーザーは何らかのトラブルに遭った場合、取引所のサポートや法的救済を受けることができますが、DEXではこれが難しい場合があります。
- トラブル時のサポートがない: DEXは中央管理者がいないため、取引に問題が発生してもサポートを受けることができません。取引のミスや資産の紛失があっても、自己責任で解決する必要があります。
- 法的保護の不足: CEXでは規制があり、ユーザーは法的な保護を受けられる場合がありますが、DEXは法的な枠組みの外で運営されることが多く、トラブルが発生しても法的な解決手段が限定されます。
⑥ 取引速度が遅い場合がある
DEXの取引はブロックチェーン上で行われるため、ネットワークの混雑状況に応じて取引のスピードが遅くなることがあります。
- 取引完了の遅延: 特にEthereumベースのDEXでは、ネットワークの混雑によりトランザクションの確認が遅れ、取引の完了に時間がかかることがあります。
- スピード重視のトレードが難しい: CEXに比べて取引の即時性が低く、頻繁にトレードを行いたいトレーダーにとっては不便なことがあります。
⑦ 取引ペアやトークンの選択肢が限られる
DEXでは、CEXと比べて対応している取引ペアやトークンの数が少ない場合があります。特に、特定のトークンや法定通貨との取引が制限されることが多いです。
- 法定通貨との取引不可: DEXでは通常、法定通貨を扱わないため、ユーザーは最初に仮想通貨を購入してウォレットに入れておく必要があります。これがCEXに比べて煩雑です。
- トークンの上場プロセスが異なる: 新しいトークンやマイナーなトークンは、必ずしもすべてのDEXで取引できるわけではありません。これは流動性の問題とも関係しています。
⑧ フロントランニング(先回り取引)リスク
フロントランニングとは、取引がブロックチェーン上で確認される前に、他のトレーダーがその取引を先回りして執行する行為です。特にガス代を上乗せして取引を優先させることが可能な場合、フロントランニングが発生しやすくなります。
- 利益の損失: フロントランニングが発生すると、希望の価格で取引ができず、利益を損なう可能性があります。
視覚的な比較表
中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の主な違いを、視覚的に理解できるように比較表で示します。
項目 | 中央集権型取引所(CEX) | 分散型取引所(DEX) |
運営形態 | 中央管理者が運営 | 中央管理者なし、スマートコントラクトで自動化 |
流動性 | 高い、取引所が流動性を提供 | 低い場合が多い、流動性はユーザーによる |
取引速度 | 高速、サーバーで管理されているため | 遅延が発生する場合がある、ネットワークの混雑に依存 |
手数料 | 低い場合が多い(取引所が手数料を設定) | 高いガス代がかかることがある(特にEthereumネットワーク) |
ユーザーインターフェース | 親しみやすく、使いやすい | 複雑な場合が多い、ウォレット管理の知識が必要 |
プライバシー | ユーザーの個人情報を要求することが多い | 高い、個人情報の提供が不要 |
セキュリティ | サーバーが攻撃のターゲットになりやすい(ハッキングのリスク) | スマートコントラクトのバグや脆弱性、フロントランニングのリスク |
資産管理 | 取引所が資産を管理 | ユーザーが自分で管理(ウォレット管理が必要) |
法的規制 | 各国の規制を受けることが多い | 法的規制は少ない、自己責任での取引 |
取引ペアの多さ | 通常、豊富な取引ペアを提供 | 取引ペアは限られていることが多い |
取引の柔軟性 | 特定の取引所が提供する条件に依存 | ユーザーが自由に取引、スマートコントラクトを使用 |
サポート・カスタマーサービス | 取引所のサポートがある | サポートが存在しない(自己責任で解決が必要) |
大人気の取引所 | Binance、Coinbase、Kraken、KuCoin、OKX、Bybit | Uniswap、PancakeSwap、Curve、1inch、Sushiswap |
この表からわかるように、CEXとDEXにはそれぞれに特徴があり、どちらを選ぶかはユーザーのニーズや取引スタイルによって異なります。CEXは手軽で取引がスムーズに進む一方、DEXは自由度が高く、プライバシーが守られるという利点がありますが、操作が複雑でリスクも伴います。
日本における暗号資産交換業の法律と規制
暗号資産交換業者とは、暗号資産(仮想通貨)の取引所を運営したり、売買、交換、管理などのサービスを提供する企業を指します。日本では、この業務を行うためには、金融庁に登録する必要があり、所定の規制を遵守することが求められます。
日本の金融庁により:
平成29年4月1日から、「暗号資産」に関する新しい制度が開始され、国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行うには、暗号資産交換業の登録が必要となりました。
暗号資産交換業者は主に中央集権型取引所(CEX)を指し、日本では多くの暗号資産交換業者がCEXの形式を採っています。CEXは、金融庁に登録された暗号資産交換業者として合法的に運営されており、ユーザーの資産保護を目的とした厳格な法的要件を遵守する必要があります。たとえば、顧客資産の分別管理や、AML(マネーロンダリング対策)、KYC(顧客確認)などの規制が適用されます。
一方、分散型取引所(DEX)は、中央管理者なしでユーザー同士が直接取引を行うプラットフォームであるため、金融庁に登録する義務はありません。
暗号資産交換業者に係る情報:暗号資産交換業者登録一覧
まとめ
CEX(中央集権型取引所)は、中央の管理者がユーザー資産を管理し、取引の利便性やスピードに優れています。使いやすいインターフェースと高い流動性が特徴で、特に初心者にも適しており、迅速な取引が可能です。しかし、ハッキングや取引所の倒産などのリスクがあり、ユーザーは資産管理の一部を取引所に委ねることになります。
一方、DEX(分散型取引所)は、ユーザーが自身の資産を直接管理し、スマートコントラクトを介して取引を行います。プライバシーが保たれ、個人情報の提供が不要なため、匿名性が高く、規制の影響を受けにくいです。どこからでも自由に取引できる一方で、スマートコントラクトの脆弱性や、特にEthereumのネットワーク手数料が高いといった課題もあります。
結論として、CEXは利便性と取引スピードを重視するユーザーに向いており、特に初心者に適しています。一方、DEXはプライバシーや資産の自己管理を重視し、より自由で柔軟な取引を求めるユーザーに最適です。どちらを選ぶかは、ユーザーの取引目的やリスク許容度に応じて判断することが重要です。
レリパは、ブロックチェーン開発、特に仮想通貨取引所の構築において豊富な実績を持ち、日本の暗号資産交換業に関する法律と規制を深く理解しています。日本市場向けに仮想通貨取引所を開発したい方は、ぜひ私たちにご相談ください。専門チームが、信頼性の高い取引所開発をサポートいたします。