日本国内におけるDXへの認知や理解は、徐々に広がっています。しかし、実際の企業によるDX推進の取り組みは、海外と比較すると順調とは言い難い状況です。その証拠に、スイスに拠点を置くIMD(国際経営開発研究所)が、 2021年に発表した「世界のデジタル競争力ランキング」によると、1位アメリカ、2位香港、3位スウェーデンに続き、日本は28位という結果になっています。
この記事では、ブライダル業界におけるDX化の現状と促進すべき理由などを詳しく解説します。さらにブライダル企業へのDX化導入方法やソリューション、開発の成功事例もご紹介しますので、ぜひDX化を目指す上での参考にしてみてください。
まずDX化の意味について簡潔に説明しましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化は、組織や企業がデジタルテクノロジーを活用して、業務の改善、効率化、イノベーションを実現するプロセスを指します。
DX化により、すでに多くの業界において新たなデジタルビジネスモデルやサービスが登場しており、顧客満足度を向上させ、市場における競争力を維持するために不可欠な存在となっています。
日本のブライダル業界におけるDX化の現状について
2020年以降、新型コロナウイルスの影響によってブライダル業界は大きなダメージをを受けました。 公益社団法人「日本ブライダル文化振興協会」のアンケートでは、2020年1~12月におけるブライダル業界全体の損失額は約8,500億円と推測されています。
最近になり、再び結婚式場を使う例が増えつつあるものの、いまだに新型コロナウイルスの影響を受けて挙式そのものを取りやめたり延期したりするカップルも少なくありません。 その代わりとして、オンライン結婚式が少しずつ広がりを見せています。
従来の結婚式のように招待した全員に参列してもらうのではなく、新郎新婦や家族などを除いて、とくに遠方の方や高齢者には自宅からオンラインで出席してもらうというものです。コロナ禍が完全に明けても、今後はこの傾向が続く可能性が極めて高いため、いかにしてDX化を推進するかが喫緊の重要課題となっているのです。
ところがその一方で、国内のIT人材は不足しており、それにともなってデジタル技術のアップデートが進まないために、ブライダル業界のDX化も遅々として普及しにくい状況が続いています。
ブライダル業界におけるDX化を促進すべき理由
結婚式場を使った挙式は、日本人にとって特別な意味をもちます。二人が愛を誓い、その門出を祝うだけでなく、両家の絆を深めるうえでも非常に大切な儀式といってよいでしょう。
さらに披露宴では、家族や友人、職場の仲間たちからの心温まるメッセージが送られたり、お色直しや余興で盛り上がったりと、個性に富んだ演出がつきものです。
「ゼクシィ結婚トレンド調査2021 全国版」によると、結婚式と披露宴への平均参列者数は42.8人で、平均費用は292.3万円となっています。よって1人あたりのコストは約6.8万円 という計算になります。
また同調査では、ご祝儀の平均総額が168.8万円、カップルの自己負担額は平均143.7万円でした。
コロナ禍よりもずい分以前から結婚式を控えめにする風潮が強まっていましたが、現在でも希望や夢が叶う結婚式や披露宴ができるなら高額な予算もいとわないというカップルは、少なからず存在します。したがって、そのニーズに高い精度で応えるためにも、ブライダル業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠といってよいでしょう。
ブライダル業界DXはこれまでのプロセスの一部、場合によっては大半のプロセスを変える必要が生じます。
それに、近年、消費者とビジネスの双方がサービスの利用において大きな変革を経験しています。こうした変化に対応するためには、現状を正確に把握し、これらの変化に適切に対処するためのDX導入が不可欠です。以下では、なぜDXが今求められているのか、その背後にある状況を解説します。
2025年のリスクを回避 「2025年の崖」とは、企業が既存のITシステムの課題に取り組まずにDXを進めなかった場合、2025年以降に経済的なリスクが発生する可能性があることを指します。経済産業省が提言した「DXレポート」によれば、もし日本の企業がDXを進展させなかった場合、年間最大で12兆円の経済損失が発生する可能性があるとされています。この「2025年の崖」を避けるために、DXが急務とされています。
スマートフォンの普及 スマートフォンは現代の生活に不可欠なデバイスとなり、消費行動に大きな影響を与えています。製品の購入、コミュニケーション、情報収集など、あらゆる活動がスマートフォン中心に行われるようになっています。ほとんどの行動がスマートフォンに関連し、センサーがデータをクラウドに送信することでさまざまな用途に活用されています。このような消費行動の変化に適応するためには、デジタルトランスフォーメーションが不可欠です。メルカリやAmazonなどは、スマートフォン中心のユーザー行動に適したサービスを提供することで競争力を高めました。このようなユーザーの変化に対処するためにDXの導入が必要です。
ビジネスモデルの変革 デジタル化により、従来のビジネスモデルが多くの業界で根本的に変化しています。新しいビジネスモデルを創造するために既存の枠組みを打破する動きも増加しています。デジタル変革によって既存のビジネスモデルが変容しているため、企業は生存のために根本的な転換が求められています。
テレワークの導入 新型コロナウイルス感染症対策や事業継続計画(BCP)の一環として、テレワークの推進が広まっています。テレワークの導入により、コスト削減や効率化などの利点があり、同時にデータの取得と活用が容易になります。このため、データを統合管理するシステムを構築し、業務プロセスを見直し、DX化する必要があります。
ブライダル業界におけるDX化の最適な導入方法と
ソリューション
DX化は様々な企業が取り組んできましたが、様々な要因によって導入がうまく行かないケースが発生します。日本企業のDX化が遅れている主な理由は、 IT人材の不足と老朽化したシステムによるところが大きいです。
1. IT人材の不足、スキル不足:DXを進めるためには、最新のデジタル技術に精通するだけでなく、市場動向や社内業務に深い理解をもつ人材が必要です。しかしながら、IT人材不足があまりに深刻で、多くの企業にとってそのような人材を確保するのが難しい状況にあります。そのため、DXを推進しようとしても初期の段階でつまずく例が少なくありません。
また、新しいデジタル技術を導入する際、スキルが不足しているケースが一般的です。実際、会社において最初からスキルが完備されているケースはまれであり、このような状況に対処する必要があります。
➞ ITツールやその他のデジタル技術に対する適応力には差があり、一定規模の組織では適応できない社員に対するサポートが不可欠です。こうした状況を解決するためには、
・導入するITシステムの範囲を初めは限定し、徐々に拡大すること。
・社員向けのトレーニングプログラムを導入し、柔軟に質疑応答できる環境を整えること。
・操作マニュアルを作成し、いつでも閲覧可能な状態にしておくこと。
がおススメです。
2.老朽化したシステム:古くなったレガシーシステムもDXの進展を阻害する大きな要因です。レガシーシステムは、最新のシステムやデジタル技術との統合が難しいうえに巨額の維持費がかかります。しかもレガシーシステムを抱える企業は日本全体の約8割ともいわれています。
レガシーシステムの更新が難しい理由としては、
- 長年の度重なる改修によりシステムが複雑化している
- システムに詳しい技術担当者が高齢化などを理由に退職し、中身を正確に理解している人材がいなくなることでブラックボックス化している
- 根本的解決には、巨額の予算と優秀なIT人材が必要になる
といったことが挙げられます。
3.予算の確保:加えて、新しいテクノロジーを導入するには一定の予算が不可欠です。
DXに関する予算を社内で申請するために必要なのは、その効果を見積もることです。 効果は大きく分けて「売上の向上」と「業務の効率化」になります。どういった効果があるのか情報は、同様の事例を調べたり、ITベンダーなどからのヒアリングによって得ることができます。
以上のような背景があるため、企業によってデジタル化やDX化の進展具合はまちまちといえます。そこで、ブライダル業界におけるDX化に成功した経験をもとに、RelipaからDXの導入方法についてご提案いたします。
我が社のCTO とテクノロジーリーダーが考案した導入ステップと一般的なソリューションズでは、以下のようなことが可能となります。
- DX戦略の構築: 最初に目標の確立とDX戦略の枠組みを設定します。
- 技術と情報システムへの投資: 自社のニーズに合ったデジタルツールやプラットフォームを選択したうえで投資を行います。
- IT人材の教育: IT人材がデジタル技術を理解し、効果的に活用できるように教育とスキル開発を行います。
- DXを促進する環境の構築: 組織内でIT化への苦手意識を払拭しつつデジタルを活用した創造性を奨励し、変革に対する意欲を促進する環境を整備します。
- セキュリティとプライバシーに留意:今後ブライダル業界では、DXがさらに発展していくと思われます。その上で、セキュリティの充実とプライバシー保護が課題となるでしょう。
顧客の多様性に適応するには、トレンドに乗り遅れないようにDXソリューションの開発と更新に積極投資し、将来のビジネスチャンスを確実につかみとる努力が求められます。そのためにもデータ利用の考え方や、IoTのスマートな活用により、顧客エクスペリエンスを向上し、イベント管理プロセスを最適化することが大切でしょう。
▼ RelipaのDXコンサルティングサービスがおすすめ ▼
我が社のCTO とテクノロジーリーダーとともに、開発をすすめていただきます。
結婚式のステップごとに導入できるDX化ソリューションとアイデアをご紹介しましょう。
詳しくは下記の通りです。
結婚式場探し
| ・ウェディング会場予約アプリの開発:カップルが結婚式場を探し、比較検討するのをサポートするアプリ。 人数、予算、場所、時期を指定して選択可能。 会場のリストや、飲食メニュー、式の計画や手順をアドバイスする機能を統合。 既婚カップルのレビュー やコメントのセクションもあり、簡単に会場を選んで予約しやすいようになっている。 複数の会場 で迷っているケースを想定して、仮予約機能の開発もおすすめです。 ・オンラインウェディングプランナーコンサルティングサービス:ビデオ通話やチャットを通じて、結婚式を安心して計画できるようにサポートする。 |
ブライダルエステの検討 | ブライダルエステの評価・おすすめサイトの開発 |
結婚指輪の購入 | 指輪の販売アプリ開発:VR機能によって、オンライン相談、オンライン試着、オンライン購入をサポート。 顧客は注文する前に結婚指輪を見たりカスタマイズしたりすることが可能。 |
BGM選び・決定 | 記念画像・ビデオをデジタル化して、簡単に保存・SNSシェアすることができる。 |
装花・ブーケの検討 | 新郎新婦が結婚式の会場の装飾などを事前に試すために仮想現実(VR)を活用するアプリケーションの開発。 |
引き出物・プチギフト選び | ・引き出物・プチギフトリストのQRコードを作り、参列者にスキャンしたうえで選択してもらう。 ・オンラインオーダー・ギフト選択・梱包・お礼状・宅配サービスといった機能を搭載するアプリ開発:引き出物の「贈り分け」をよりスムーズに簡単に行うのに便利。 遠方からの参列者にかさばる引き出物を持たせない目的も。 |
招待状の送付 | ・オンライン招待状・オンライン送付:郵便形式に比べて記入したり投函したりする手間が省ける。出欠についての返信がより早くなるメリットも。 ・オンラインで招待状をデザイン ・参列者の祝辞を残すプラットフォーム開発:オンライン記念ノート 、オンライン記念画像記念ビデオをアップロードできる。 |
参列者の席次決定・席次表 | 席次表のアプリシステム開発:オンライン招待状から集まるゲスト情報と席予約のマニュアルを総合するアプリ・システム 。参列者数の把握と席順を楽に決められる。 |
参列者の交通・宿泊・着付けの手配 | ロジスティクスの活用:遠方からの参列者にレンタカーの手配、宿泊先の予約、着付けの手配といった機能を搭載するアプリ。 |
検討すべき項目のリスト化と決済 | やることリストの活用、完了した項目をチェックできる。 |
スピーチや手紙、謝辞などの原稿作成 | ・スピーチや手紙、謝辞などの原稿テンプレート キーワードを入力すると、原稿が自動的に作成される。 |
他のアイデア | ・オンライン結婚式アプリ開発:オンライン通話を利用して、式に参加することができる。 ・挙式、披露宴の管理 スーパーアプリ開発:準備ステップから完成に至る、予算管理、決済などのAll In Oneアプリ。 |
ブライダル業界でDX化を導入した成功実績をご紹介
実際にRelipaの開発したプロジェクトを事例としてご説明します。
1/ お客様企業の現状
ブライダル関連企業で、主なサービスは、披露宴会場予約・情報提供の媒体。20代から40代の男性向けに結婚情報を提供するサイトを運営。
2/ DX化希望の理由
デジタルニーズが急激に増加している状況下で、さらなる顧客獲得のためにDXを推進したい。
3/ DX化したシステムについて
開発案件の概要
・結婚式の参列者に贈る引き出物・プチギフトを注文するサイトの構築。
・式の参列者向けのギフト専門販売者と新郎新婦をつなぐプラットフォーム。
・新郎新婦はウェブサイト上で参列者への引き出物・ギフトを選び、ギフト包装紙や数量を自由に指定することも可能。注文情報がシステムに送信されると、その情報を自動的に販売業者に提供のうえ手続きが進む仕組み。
DX化システムの主な機能
購入・注文に関する情報(注文内容や配送場所など)は、販売業者(プロバイダー)が引き受けて処理する。
管理者(Admin)が販売業者(プロバイダー)を追加し、必要に応じて顧客からの購入・注文に関する情報を提供することも可能。
販売業者は自社製品を詳細情報とともにウェブサイトに掲載し、在庫のオンライン管理を行うことができる。
Relipaの工夫したポイント
結婚式のギフト販売業者と顧客をマッチングする利便性の高いアイデアですが、単に商品とパッケージ、数量を指定できるだけでは、システムとして単純すぎます。そこで以下のようなご提案をしました。
このプラットフォームをベースに、注文の前払い(現行の方法と同様)に加えて、支払いオプションやギフトの種類ごとの配達場所の選択を追加するなど、機能をさらに拡充しました(参列者が自宅に贈り物を届けてほしいと希望した場合などに対応)。
贈り物に添えるカスタマイズ可能なお礼のメッセージをカードに記入できるようにしました。
参列者がアプリ(スマートフォン)を通じて、または直接結婚式の会場でタッチスクリーンを使用して、贈り物を選択し、贈り物の受け取り先の住所を入力できるようにしました。
Relipaは、ブライダル業界におけるDX化の導入を積極的にサポートしてまいりました。今後、本格的にDX化の推進をご検討の皆様は、ぜひ弊社までご連絡ください。
まとめ
今やDX化によって、規模の小さな企業でも大手企業に引けを取らないパフォーマンスが可能になります。とくにブライダルのようなイベント管理業界では、DXが積極的に導入され、業務の向上、余剰労働力の節約、企業の収益向上に寄与し始めています。それは、Gartner、IDCといった大手市場調査会社の報告書を見ても明らかです。
DXによる利点を改めて整理すると以下の通りです。
- ユーザーの利便性の向上
- 運用コストの削減
- 多くの見込み客へのアクセス増加
- 迅速で正確な意思決定の実現
- 従業員の生産性最適化
これらの要素は、組織の効率化と競争力を向上させ、企業の業績を高めるうえで大いに役立つでしょう。