オフショア開発の準備手順とは?必ず押さえておきたい7つのステップ

従来のオフショア開発の目的は、おもにコストの削減にありました。それに加えて、昨今はIT人材の深刻な不足もあり、海外で優秀な人材を確保できるオフショア開発への期待が高まっています。しかし、海外法人との仕事では何かと問題が発生しやすいため、慣れない日本企業の担当者には未だハードルが高いのも事実でしょう。

はじめてのオフショア開発で「こんなはずではなかった……」という失敗に陥らないためには、事前準備が必要です。今回は、オフショア開発の準備手順で必ず押さえておきたいことを、7つのステップに分けて解説します。

オフショア開発の準備(1)目的・意識をチーム内で統一する

オフショア開発の失敗事例として多く語られるのが、納期遅れや制作物の品質の低さです。

それを避けるためには、発注者側の内部で以下の3点を明確化し、その内容をオフショア開発会社に伝えることが必要です。

  • なぜオフショア開発を行なうのか

コスト削減やリソースの確保など、オフショア開発に期待する具体的な目的をすり合わせましょう。

  • 何を、どのような目的で作るのか

これから開発する製品の開発目的などを、チーム内で綿密に共有し合いましょう。そうすることで、これから依頼する制作物に対する認識を自社内で統一できます。

  • プロジェクトの目標・ゴールをどこに設定するのか

目標・ゴールをスケジュールとともに事前に明確にしておくことで、開発過程で問題に直面した際にも、焦らず最適な選択をとることができます。

オフショア開発の準備(2)役割分担や責任範囲を明確にする

海外メンバーとの協働が欠かせないオフショア開発では、文化・常識・言語の違いがプロジェクト進行の障壁となりやすいです。コミュニケーションギャップが問題に発展するのを防ぐには、あらかじめチーム内で役割分担や責任範囲を決めておくとよいでしょう。

なかでも特に注意したいのが、以下の2点です。

  • 自社とオフショア開発先の業務範囲

日本流のビジネススタイルや、「暗黙の了解」といった文化は、オフショア開発先の海外メンバーには原則通用しません。また、業務の範囲に関しても、海外では、契約で定めた以外の業務には対応してもらえないのが一般的です。

したがって、進捗管理や報告ルール、品質確保のためのコミュニケーション手順などについては、すべて契約前に取り決めを行ない、委託先スタッフに共有しておきましょう。

  • チーム内の意思決定プロセス

各メンバーの責任範囲と開発工程ごとの最終意思決定者についても、事前に明確にしておくことが大切です。そうすれば、人によって異なる見解・判断に右往左往したり、作業が滞ったりすることを防げます。

オフショア開発の準備(3)国ごとのメリット・デメリットを把握する

オフショア開発の委託先としては、次の7ヵ国が候補に挙がることが多いです。目的や期待する成果などを意識しつつ、言語や時差、環境、国民性といった条件も考慮して検討しましょう。

  • 中国

中国は、日本企業向けのオフショア開発実績が多く、対応可能な技術も幅広いのが特徴です。ただし、技術力の向上に伴い人件費が上昇傾向にあるので、コスト削減を第一目標にしている会社には不向きといえるでしょう。

  • インド

中国と並んで世界トップクラスといわれる技術力と、豊富な人材を有するのがインドです。英語が堪能な技術者が多いため、特に欧米向けのオフショア開発実績が豊富です。プロジェクトの上流工程から安心して任せられる委託先ですが、人件費は中国同様、右肩上がりに上昇しています。

  • ベトナム

ベトナムでは官民一体となってIT教育が推進され、国策としても日本企業向けのオフショア開発に力が入れられています。そのような背景もあり、日本語力を備えた優秀なエンジニアやブリッジSEも非常に見つけやすいです。また、真面目で勤勉な国民性で、日本企業とも相性がいいといわれています。

さらに、人件費も中国やインドよりも割安でコストパフォーマンスが高いため、近年にじわじわと人気が高まっている委託先です。

  • フィリピン

大学進学率が高く、優秀なIT人材を数多く抱えているのがフィリピンです。英語が公用語であることから、英語でのスムーズなコミュニケーションが可能です。

同じく東南アジアの新興国であるベトナムと同様に、人件費はやや割安です。

  • ミャンマー

オフショア開発の歴史はまだまだ浅いですが、非常に安価にエンジニアを確保できるのがミャンマーの魅力です。日本語学習者も多いため、英語に不安がある日本企業にも安心です。

しかし、インフラの整備が未だ不十分で停電が多いため、納期が厳しいプロジェクトの委託には向かないかもしれません。万一のトラブルに備えて、余裕を持ってスケジュールを決めるとよいでしょう。

  • バングラデシュ

近年、最も新興のオフショア開発先の一つとしての期待が高まっているバングラデシュ。オフショア開発の実績がまだ少ないため、その実力は未知数ですが、近い将来、低コスト・高品質を実現する新たな選択肢として台頭してくる可能性が高い国ともいえます。

なお、2020年のオフショア開発の動向については、ぜひこちらの記事も参考にしてください。

オフショア開発の準備(4)委託企業を選定する

数多くあるオフショア開発企業のうち、どこに委託するかを決める際には、以下の選定基準をもとに慎重に判断しましょう。

  • 言語の壁やコミュニケーションに不安がないか
  • オフショア開発会社の得意分野と自社の目的・目標がマッチしているか
  • セキュリティ対策が自社の基準を満たしているか
  • 万一の場合に備えた保証制度はあるか

また、オフショア開発会社には、さまざまな運営母体がありますが、初心者におすすめなのは、以下の3タイプです。それぞれの特徴も把握したうえで、自社に最適な選択をしましょう。

日本での留学・勤務経験を持つ現地人が設立した企業

企業のトップが、日本と現地国、両方の特性を踏まえて運営するこのタイプの会社は、日本語ベースのコミュニケーションや、日本のビジネス文化に沿った対応が可能である場合が多いため、オフショア開発初心者にもおすすめです。

さらに、現地人による法人であるため、ほかのタイプの会社よりややコストが安い傾向があります。

現地在住の日本人が設立した企業

現地在住の日本人が設立した企業なら、より日本でのビジネスに近いかたちでの取引が可能です。技術者も日本人の仕事文化や価値観に慣れているケースが多いため、安心してプロジェクトを進められるでしょう。

日本企業が設立した企業

日系企業の資本で海外に設立されたタイプの企業もあります。こういった会社では、日本人社員や日本人ブリッジSEが顧客窓口を務めるケースが多いため、コミュニケーション面での不安を抱える心配はほぼないといえるでしょう。ただし、やや費用が高い傾向があるため、予算に配慮しつつ検討しましょう。

オフショア開発の準備(5)契約形態・開発方式を決定する

オフショア開発会社を選ぶ際には、契約形態や開発方式にも注意する必要があります。

契約形態

オフショア開発の契約形態は大きく2種類あります。仕様書ベースであらかじめ決められた制作物を、決められた期限内に開発する「受託型開発」と、期間を定めて委託先に技術者のチームを編成して進める「ラボ型開発」です。受託型開発は業務委託契約でいうところの請負契約、ラボ型開発は準委任契約にあたります。

プロジェクトの規模や特性によって、自社に最適な契約形態を決めましょう。ただし、オフショア開発会社によっては、いずれかの契約形態には対応できないといったケースもあるため、企業選定の段階で必ず確認するようにしましょう。

オフショア開発の契約形態に関しては、以下の記事でくわしく紹介しています。

【オフショア開発の体制】受託型・ラボ型の違いから、選び方まで徹底解説

開発方式

契約形態を検討する際には、プロジェクトに適した開発方式についても検討したほうがよいでしょう。

制作物の要件がおおむね決まっているプロジェクトは、上流工程から下流工程まで計画的に開発を進める「ウォーターフォールモデル」が品質担保の面で適しています。これは、おもに受託型開発で契約した際に採用される開発方式です。

一方、要件ではなく開発目的(ユーザーストーリー)をもとに、機能実装やバージョンアップをしていくプロジェクトは、短期間での開発とフィードバックを積み重ねる「アジャイル開発」で進めるのがスムーズです。アジャイル開発は、納期と制作物の仕様が流動的なラボ型開発で採用されるのが一般的です。

オフショア開発の準備(6)仕様書を作成する

オフショア開発のよくある失敗事例として、納期遅れや制作物の品質の低さが挙げられます。その要因の一つは、「あらかじめ仕様書に記載されていないことには対応しない」という海外流のビジネスのスタンスにあります。

そこで、自社からオフショア開発先に提示する仕様書を作成する際には、以下4点を忘れないようにしましょう。

  • 「言わなくてもわかってくれるだろう」という期待は捨てる
  • 主語・述語・目的語を曖昧にせず、明確かつ具体的に指示をする
  • 図表・フローチャートを活用して視覚的な理解を促す
  • 具体的な開発フローやコミュニケーションの手順も事前に案内しておく

オフショア開発の準備(7)キックオフ

オフショア開発先との契約が整ったら、開発に着手する前に自社メンバーとオフショア開発会社のメンバーとで、キックオフミーティングを開催するのが望ましいです。実際に対面するに越したことはありませんが、もちろんオンラインでもかまいません。

キックオフの目的は、日本の自社メンバーと海外のプロジェクトチームメンバーが一体となって、同じ目的・目標に向かう空気感を作り上げることです。

物理的な距離が離れているからこそ、こういった会を通して親睦を深め、信頼関係を構築していく努力を怠らないようにしましょう。

まとめ

以上の7ステップをしっかり準備しておけば、はじめてのオフショア開発も安心して進められます。あとは、オフショア開発会社のメンバーとスムーズにコミュニケーションとれるように心がければ、大きな失敗は未然に防げるはずです。

しかし、自社のプロジェクトに最適なパートナー企業を探すのは、日本国内でも難しいものです。それが海外ともなれば、「この企業に委託することが正解だろうか」と不安になるのも無理はありません。

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