Rustはシステム開発やWebバックエンドだけでなく、GUI開発の分野でも注目を集めています。特に近年では、Rustを活用したGUIアプリケーション開発をオフショアエンジニアチームに委託する企業も増えています。
しかし、GUI開発のエコシステムはまだ発展途上にあり、さまざまなアプローチを持つライブラリが並立しているのが現状です。
本記事では、主要なRust GUIライブラリ(Dioxus、Iced、Slint、eguiなど)を取り上げ、それぞれの特徴・利点・ユースケースを比較します。さらに、プロジェクト要件に応じた最適な選定ポイントを整理し、RustでGUI開発を検討する企業・開発チームに向けて実践的な視点を提供します。
オフショアエンジニア視点:RustがGUI開発に向く理由
Rustは、現代のプログラミング言語の中で「高パフォーマンス」「メモリ安全性」、そして「モダンな開発体験」を兼ね備える唯一無二の存在として注目されています。特に、システム開発やWebAssembly(Wasm)の分野では、その採用が急速に拡大しています。
しかし、長らくRustは「CLI(コマンドライン)やバックエンド向けの言語」という印象が強く、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)開発では選択肢や成熟度に課題がありました。
この状況は2024年以降、大きく変化しています。
Iced、Slint、egui、Dioxusなどの主要なRust GUIライブラリが急速に進化し、実用的なクロスプラットフォーム対応を実現したことで、「Rustで高性能なGUIアプリを開発できる時代」が本格的に到来しました。
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RustがGUI開発のトレンドとなっている背景には、次の3つの決定的な要因があります。
「パフォーマンス」と「軽量性」の両立
C++に匹敵する実行速度を持ちながら、ガベージコレクション(GC)を使用しないため、ユーザーインターフェースの応答性が非常に高く保たれます。特に、複雑な描画処理やAI・機械学習のバックエンド処理を伴うGUIアプリケーションでは、そのパフォーマンスの優位性が際立ちます。
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「メモリ安全性」による高い安定性
GUIアプリケーションのクラッシュ原因の多くは、
- データ競合(Data Race)
- Nullポインタ参照
といったメモリ管理の問題に起因します。
Rustは独自の所有権(Ownership)システムにより、こうしたエラーをコンパイル時に排除します。
その結果、大規模・長期運用を前提としたGUIアプリケーションでも、高い安定性と信頼性を確保できます。
これは、複数名のオフショアエンジニアが関わる開発体制においても、品質を保ちやすいという点で大きなメリットとなります。
「将来性」と「クロスプラットフォーム」対応
近年、Rustは以下のような分野でGUI開発の需要を高めています。
- Wasm(WebAssembly):ブラウザ上でネイティブに近い速度でGUIを実行でき、Webアプリのパフォーマンスを大幅に向上させます。
- IoT・組込システム:限られたリソース環境でも安定して動作するメモリ効率の高いGUIを構築可能です。
- デスクトップアプリ開発:ElectronなどのWeb技術ベースよりも軽量で、高速なデスクトップアプリを構築できます(例:Tauriとの連携)。
2025年現在、RustによるGUI開発は「安全性 × パフォーマンス × 将来性」を兼ね備えた最先端のアプリケーション開発手法として注目されています。
次に、実際にどのRust GUIライブラリが注目されているのかを比較していきましょう。
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Rust GUIエコシステムの現状
現在、Rust GUI開発のエコシステムは急速に進化を続けていますが、まだ「標準」と呼べる決定的なライブラリは存在していません。
しかし、これは決してネガティブな状況ではありません。
むしろ、複数のアプローチが並行して成熟している柔軟な状態であり、オフショアエンジニアを含む複数名体制での開発においても、プロジェクト要件に応じた最適な選択が可能になっています。
RustでのGUI開発は、大きく分けて以下の3つの方向性に進化しています。
ネイティブRustライブラリ
こちらは、完全にRustで構築されたGUIフレームワークであり、独自のレンダリングエンジンを使用しています。
他言語に依存せず、Rustのメモリ安全性と高いパフォーマンスを最大限に活かせる点が特徴です。
代表例: egui、iced、Slint、Druid
強み: 純Rust実装のため外部依存が少なく、高速かつ軽量です。
弱み: モバイルやWeb対応が限定的であり、UIデザインの自由度はフレームワークによって異なります。
ハイブリッド
このアプローチでは、フロントエンドにHTML・CSS・JavaScriptなどのWeb技術を使用し、バックエンド処理をRustが担います。
既存のWeb開発経験を活かせるため、オフショアエンジニアを含む開発チームでも導入しやすい構成です。
代表例: Tauri、Dioxus
強み: クロスプラットフォーム対応が容易であり、Electronに比べて軽量かつ高速です。
弱み: WebViewに依存しているため、完全なネイティブ性能を発揮することは難しい場合があります。
既存GUIツールキットのRustバインディング
こちらは、GTKやQtなどのC/C++ベースの成熟したGUIツールキットを、Rustから安全に利用するアプローチです。
既存資産を活かしやすく、オフショアエンジニアを含む大規模チームでの長期運用に適しています。
代表例: gtk-rs、qt-binding(qt-rsなど)
強み: ネイティブな見た目(Look & Feel)と高い安定性を実現できます。
弱み: 他言語のバインディングを介するため、開発体験がやや複雑になることがあります。
このように、RustのGUIエコシステムは「分断」ではなく、オフショアエンジニアによる開発体制も前提とした多様化・進化のフェーズにあります。
プロジェクトの目的、対象プラットフォーム、チーム構成に応じて、最適なRust GUIライブラリを選択できる環境が整いつつあると言えるでしょう。
代表的なRust GUIライブラリ7第
2025年現在、RustでGUIアプリケーションを開発するためのライブラリは多様化が進み、それぞれ異なる方向性で進化を遂げています。
ここでは、実際の開発コミュニティで利用実績が多く、今後も継続的に開発が期待されている代表的な7つのRust GUIライブラリを紹介します。
egui
軽量・高速なImmediate Mode GUIフレームワーク
eguiは、Rust製の軽量なImmediate Mode型GUIライブラリです。
シンプルなAPI設計と最小限の依存関係で、すぐにUIを構築できるのが特徴です。
特に、デバッグツール、ゲーム内UI、プロトタイプ開発に最適とされています。
- 代表的な用途: ゲームツール、可視化アプリ、教育用GUI
- 開発モデル: Immediate Mode
- 対応プラットフォーム: Windows / macOS / Linux / WebAssembly
- 強み: 高速、軽量、コードが直感的で理解しやすい
- 弱み: 大規模アプリや複雑なUIにはやや不向き
Iced
Elmアーキテクチャを採用した宣言的UIフレームワーク
Icedは、関数型アプローチと明確な状態管理を特徴とするRust GUIフレームワークです。
Rustの型安全性を活かしつつ、Web(WASM)やデスクトップ両方で動作します。
開発チームによる活発なアップデートも継続中です。
- 開発モデル: Retained Mode(宣言的UI)
- 対応プラットフォーム: Windows / macOS / Linux / Web
- 強み: 状態管理が明確、デザインとロジックを分離可能
- 弱み: ビルド時間が長め、大規模アプリでパフォーマンス調整が必要
- 代表的な用途: 業務アプリ、クロスプラットフォームツール、教育系ソフト
Slint
UI設計とロジックを分離できるプロ仕様GUIフレームワーク
Slintは、商用利用を視野に入れたGUIツールキットで、
独自のマークアップ言語(.slintファイル)を使ってUIを宣言的に定義できます。
組み込み開発や産業アプリに多く採用されており、低リソース環境でも滑らかな描画を実現します。
- 開発モデル: Retained Mode + 専用UI言語
- 対応プラットフォーム: Windows / macOS / Linux / Embedded / Web
- 強み: 高速描画、UIとロジックの明確な分離、C++やPython連携も可能
- 弱み: 独自言語学習のコストがやや高い
- 代表的な用途: 組み込み機器、商用GUI、産業制御アプリ
Tauri
Rust + Web技術による超軽量クロスプラットフォームフレームワーク
Tauriは、Rustをバックエンド、WebViewをフロントエンドとして利用するハイブリッドフレームワークです。
Electronのような開発体験を提供しながら、バイナリサイズを1/10以下に抑えることが可能です。
Webエンジニアを含むオフショアエンジニアチームでも導入しやすい点が大きな特徴です。
- 開発モデル: Hybrid (Webview)
- 対応プラットフォーム: Windows / macOS / Linux
- 強み: 軽量、高速、安全、Webエコシステムの活用が可能
- 弱み: WebView依存のため完全ネイティブではない
- 代表的な用途: クロスプラットフォームデスクトップアプリ、PWA連携ツール
Dioxus
React風構文を採用したマルチプラットフォームUIフレームワーク
Dioxusは、React Hooksに似た宣言的UI構文を採用し、Web・Desktop・Mobileを統一的に開発できるフレームワークです。
JSX風マクロを使い、RustのみでUIロジックを記述できる点が特徴です。
- 開発モデル: Hybrid (Virtual DOM)
- 対応プラットフォーム: Web / Desktop / Mobile
- 強み: コード再利用性が高い、Web技術に近く学習が容易
- 弱み: エコシステムはまだ成長段階
- 代表的な用途: クロスプラットフォームUI、Rust製Webアプリ、軽量ツール
gtk-rs
長年の実績を誇るGTKのRustバインディング
gtk-rsは、C言語ベースのGUIライブラリGTKをRustで扱えるようにしたバインディングです。
Linuxデスクトップ環境での安定性とネイティブルックを維持しながら、安全なRustコードで開発が可能です。
- 開発モデル: Binding(Cライブラリ呼び出し)
- 対応プラットフォーム: Linux / Windows / macOS
- 強み: 安定性抜群、長期サポート、GObjectシステムとの互換性
- 弱み: ビルドが重い、API設計が複雑
- 代表的な用途: Linux向けデスクトップアプリ、業務システム、ユーティリティ
Druid
データフロー志向の次世代Rust GUIフレームワーク
Druidは、「データ主導設計」(Data-Driven UI) をコンセプトにした実験的フレームワークです。
開発速度はやや遅いものの、高パフォーマンスなデスクトップアプリ開発を目指す研究的プロジェクトとして注目されています。
- 開発モデル: Retained Mode
- 対応プラットフォーム: Windows / macOS / Linux
- 強み: データバインディングが明確、高いパフォーマンス設計
- 弱み: 開発進行が緩やか、ドキュメントが少ない
- 代表的な用途: デスクトップアプリ、UI設計の実験、教育目的
オフショアエンジニア視点のRust GUIライブラリ比較
| ライブラリ名 | 開発タイプ | 対応プラットフォーム | 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| egui | ネイティブRust | Windows / macOS / Linux / Web | Immediate Mode GUI。 軽量で高速。 | シンプルなAPIとWeb対応。 | 高度なUI設計はやや制限あり。 |
| iced | ネイティブRust | Windows / macOS / Linux / Web | Elm風アーキテクチャ採用。 | 宣言的で分かりやすい構造。 | 高度なUI機能はまだ発展途中。 |
| Slint | ネイティブRust + DSL | Windows / macOS / Linux / Web / Embedded | 独自UI言語で設計効率が高い。 | 高パフォーマンスで組込み対応。 | DSL習得が必要。 |
| Druid | ネイティブRust | Windows / macOS / Linux | データ駆動型UI。 | 柔軟なアーキテクチャ。 | 開発が一時停滞中。 |
| Tauri | ハイブリッド(WebView) | Windows / macOS / Linux / Mobile | HTML/CSS/JSを活用可能。 | Electronより軽量。 | 完全ネイティブではない。 |
| Dioxus | ハイブリッド(Web + Native) | Web / Desktop / Mobile | Reactライクな構文。 | 学習コストが低い。 | 一部機能は開発中。 |
| gtk-rs | バインディング(C言語) | Windows / macOS / Linux | GTKをRustで安全に利用。 | 安定性と豊富なUI部品。 | Cバインディング依存。 |
オフショアエンジニア視点のRust GUIライブラリ選び方
RustにおけるGUI開発は多様なアプローチが存在するため、オフショアエンジニアを含む分散開発体制では、プロジェクトの目的や要件に応じた適切なGUIライブラリ選定が特に重要になります。
ここでは、代表的なユースケースに基づき、最適なRust GUIライブラリを選ぶための観点を整理します。
軽量かつ高パフォーマンスなデスクトップアプリを開発したい場合
Iced、egui、およびSlintは、純粋なRust実装による軽量で高速な描画が可能なライブラリです。
外部依存が少なく、シンプルなコード構成で構築できるため、ユーティリティ系ツールやグラフィック表示アプリ、業務用のデスクトップクライアントに最適です。
- Iced:機能と拡張性のバランスが良く、クリーンなUI構築に適する。
- egui:学習コストが低く、ツールやデバッグUIに向く。
- Slint:専用のUI言語を備え、産業用途や組み込み開発にも強い。
Webとデスクトップの両方をターゲットにしたい場合
TauriやDioxusは、Web技術とRustバックエンドを組み合わせたハイブリッド型アプローチです。
フロントエンドとバックエンドの役割分担が明確なため、オフショアエンジニアとの協業や並行開発にも適しています。
Electronよりも軽量で、リソース効率に優れたアプリを実現できます。
- Tauri:クロスプラットフォーム開発に強く、企業システムのフロント統合にも適する。
- Dioxus:Reactライクな構文により、Webとネイティブの両方を1つのコードベースで開発可能。
安定性・信頼性を最優先する業務アプリケーションの場合
長年の実績を持つGUIツールキットをRustで活用する場合、gtk-rsやQtバインディング(qt-rsなど)が有力な選択肢です。
これらは安定性・互換性・メンテナンス性に優れ、エンタープライズ環境や長期運用が前提の業務システムに最適です。
- gtk-rs:Linux環境との親和性が高く、企業向けアプリケーションに多く採用。
- Qtバインディング:クロスプラットフォーム対応と豊富なUIコンポーネントが魅力。
WebAssemblyやマルチプラットフォーム展開を見据えた場合
ブラウザやWasm対応を視野に入れる場合、Slint、Dioxus、egui(Wasm対応版)が注目されています。
これらはWeb上でもネイティブに近いパフォーマンスを発揮でき、AIダッシュボードやデータビジュアライゼーションアプリなどの次世代UIに適しています。
Rust GUIエコシステムはまだ発展の途上にありますが、その多様性こそが強みです。
「パフォーマンス」「安全性」「拡張性」の3軸から自社のプロジェクト要件を整理し、最も適したライブラリを選定することで、
高品質かつ持続可能なアプリケーション開発を実現できます。
まとめ
RustのGUIエコシステムは、まだ発展の途中にありますが、その安定性・高速性・安全性はすでに多くの分野で評価されています。プロジェクトの目的や開発規模、求められる品質レベル、そしてオフショアエンジニアを含む開発体制に応じて、最適なGUIライブラリを選定することが、プロジェクト成功の重要な鍵となります。
特に、Webとデスクトップの両方に対応したクロスプラットフォームアプリケーションを開発する場合、Dioxus・Tauri・IcedといったRust GUIライブラリは、開発効率と保守性の両立という点で非常に有力な選択肢です。これらの技術は、分散したオフショア開発チームにおいても、コード品質を維持しやすい設計思想を備えています。
Relipaでは、Rustを活用した高品質なGUIアプリケーション開発をはじめ、Web3・AI・Blockchain分野の豊富な実績を有しています。
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