日本企業のなかには、ベトナムでのオフショア開発やIT企業の動向に関心を持っている方も多いのではないでしょうか。ここでは、今後大きく伸びるといわれている、ベトナムのIT産業に関する最新情報を紹介していきます。
最新情報として、ベトナムIT産業やオフショア市場の動向、今後のIT産業の展望や課題などを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【2020年最新版】ベトナムのIT市場の状況
ベトナムは、2005年~2015年の10年間で最もIT市場が成長した国の一つです。
岡山県ベトナムビジネスサポートデスクによると、国際電気通信連合(ITU)の統計において、2005年は12.74%だったベトナムのインターネット普及率が、2015年には52.72%まで上昇しました。それにともないIT産業の総売上高も上昇し、2010年の76億USドルから2015年の495億USドルと、5年間で6倍以上の急成長を遂げているのです。
2019年時点におけるベトナムのインターネット普及率は66%というデータもあり、ベトナムの情報・通信分野は、今後もさらに成長し続けるといえるでしょう。IT産業を含むICT産業(情報通信業界)の2019年の売上高は、前年比で10%増の1,123億5,000万USドルとされています。
このような背景から、特にホーチミン・ハノイ・ダナンなどの地域に、世界のテクノロジー企業からの注目が集まっています。すでにサムスン電子、HCLテクノロジーズ、アクソン・エンタープライズといった世界的なリーディングカンパニーがベトナムへの進出・投資に力を入れているようです。Appleもまた、ベトナムに熱い視線を注いでいます。
今後は、さらに世界の大手テクノロジー企業の進出先となっていくでしょう。
ベトナムのオフショア市場の動向
次に、ベトナムのオフショア市場の動向を見ていきましょう。
IT産業が急成長したことでIT人材の需要も上昇し、ベトナム国内のエンジニアの数は一気に増えました。政府も力を注いでいる分野・産業であるため、優秀なIT人材が育ちやすい環境が整っているのです。
今やベトナムは、中国やインドに並ぶ代表的なオフショアパートナーとして、日本のみならず世界中の企業から注目を集めており、委託先として大変人気があります。日本企業向けのオフショア開発市場の規模を見ても年々拡大しており、年間16億USドル以上の規模になっています。
ただし、ベトナムのIT業界はハードウェアの売上が全体の8割以上を占めており、ソフトウェアの売上にあたるオフショア開発の売上割合・規模は小さいのが現状です。その分オフショア開発は今後、特に成長が見込まれる分野という見方もできるでしょう。
以下の記事では、2020年最新版のオフショア開発動向を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:【2020版】オフショア開発の最新動向!ブームの背景と市場の状況を解説
【ベトナムIT産業】今後の展望と課題とは?
ベトナムIT産業には、今後どのような展望や課題があるのでしょうか。また、今後のベトナムIT産業の状況が、日本にどのような影響を与える可能性があるかについても考察します。
ベトナムIT産業の今後の展望と課題
ベトナムのIT産業の市場規模はまだまだ成長過程にあり、現状はハードウェアもソフトウェアも海外市場向けのプロダクト販売が主流です。今後はベトナム国内でのプロダクト販売を意識したITビジネスの体制作りを、徐々に進めていく必要があるでしょう。
ベトナムの人口は2020年時点で約9,734万人(推計)となっており、2050年までの30年間は増加傾向が続くと予測されています。そう遠くない将来、日本の人口を超えることは間違いないでしょう。年齢別に見ると、65歳以下の割合が92.1%と非常に高いのも特徴です。市場展望・予測は高齢者層の割合が年々厚みを増している日本とはほぼ真逆で、IT産業におけるサービスの需要と供給もますます増えるものと見られています。
中国やインドと同様、外向きのビジネスから内向きのビジネスへとステップアップしていけるかどうかが、今後の課題といえるでしょう。
ベトナムIT産業の発展が日本に与える影響
ベトナム国内のIT市場の盛り上がりや技術が発展することで、オフショア開発の単価が上がるなど、一種のデメリットが生じる可能性が高くなるかもしれません。
ただ、デメリットだけではなく、ベトナムIT産業の発展により高度な開発を委託できるようになるというメリットもあります。日本とは異なり、将来を担う若い世代の層が厚いベトナムの人口構造も、日本企業にとっては魅力のある市場に感じるのではないでしょうか。ビジネスパートナーとして共同で行なう事業の可能性が広がることも、大いに考えられます。
ベトナムIT企業の今後のおもな方針
今後も、需要と供給が加速していくと見込まれるベトナムのIT企業は、この先どのような方針のもとに動いていくのでしょうか。国内大手企業などの動きから、いくつかの側面における予測をまとめてみました。
オフショア開発に依存する体制からの脱却
先述の通り、ベトナムも中国やインドなどと同じように、外向きのビジネスから内向きのビジネスへとステップアップすることを目指すようになるでしょう。オフショアを売上の重要な軸としながらも、国内に目を向ける動きも同時に活発化してきています。
新たな事業構築や開発に向け、大規模な人材の拡充を計画している企業もあるようです。ポテンシャルの高い国内市場を見れば、自社ブランドの技術やアプリ開発などを目指したいと考えるのも自然な流れといえるでしょう。
グローバル企業への脱皮に向けて、海外展開を加速
M&Aなどを通じた海外展開への動きが、大手企業を中心に広がっています。さらに近年は、世界中の大手企業とともにデジタル案件に取り組む機会も多くなっているようです。今後、世界のパートナー企業との協業に力を入れる企業も増えていくことが見込まれます。
デジタルコンテンツ市場の強化
2018年のデジタルコンテンツ市場の売上高は8億9,500万USドルでした。2015年以降、年々増加している注目の成長市場ですが、その額の約9割は輸出によるものです。
ただ、ベトナム政府は自国のIT産業力の向上を国策として掲げています。実際ベトナムにおけるIT産業は、すでに圧倒的な存在感を持つ分野にまで成長しました。政府の支援のもとで国内のデジタルコンテンツを手がけるIT企業も、今後ますます成長していくことが見込まれるでしょう。
セキュリティなどサービスの質のさらなる強化
国際電気通信連合(ITU)が発表した2018年の「グローバル・サイバーセキュリティ・インデックス(GCI※)」のランキングでは、ベトナムは世界175ヵ国・地域のなかで50位という結果でした。前年の世界193ヵ国・地域中100位から大きくランクアップしています。東南アジアにおけるランクが、前年の9位から5位に上昇している点にも注目です。
市場が大きくなるにつれ、セキュリティを含めたサービス全体の質の向上を図るために、政府の働きかけも強まっているようです。
※GCI(Global Cybersecurity Index)
サイバーセキュリティに関する各国・地域の整備体制や取り組みを測定・評価する指標のこと。法的、技術面、組織構造、能力構築、国際連携についてセキュリティ能力が評価され、2014年の初版以降、測定・評価、ランキングが更新されています。
まとめ
ここ10年~15年ほどで、ベトナムのIT市場やオフショア市場は急成長しています。ベトナムは政府の積極的な後押しにより優秀なIT人材が育ちやすい環境もあり、海外のIT企業からの注目度が高い国です。
日本にとっては、ベトナムのIT産業が発展することでオフショア開発の単価が上がるといったデメリットも考えられますが、より高度な開発を委託できるようになるという大きなメリットも見逃せません。
オフショアに依存する体制から抜け出したいベトナムのIT企業にとって、今後は対国内のビジネス展開が課題です。将来性のある人口構造にも支えられ、国内の需要・供給もますます拡大していくでしょう。
レリパは、日本企業に特化したベトナムのオフショア開発会社で、創業者は立命館大学卒の3人のベトナム人です。レリパには日本人の開発メンバーも在籍しており、ベトナムと日本に精通したサービスを提供しています。急成長中のベトナムIT企業へのオフショア開発依頼をご検討中であれば、ぜひご相談ください。