メタバース(Metaverse)とは?注目されている理由や実例・今後の動向を詳しく解説!

2021年10月末、GAFAの一角をなすフェイスブックが、社名を「メタ」に変更しました。このニュースは、たちまちのうちに世界中を駆けめぐりましたが、「そもそもメタってなに?」と思われた方も多いかもしれません。 

メタとは「メタバース」を意味します。SFやゲームの世界ではお馴染みの仮想空間を、より現実目線で進化発展させて、ビジネスや日常生活、社会交流に活かそうという動きです。それにとどまらず、すでにブロックチェーンとの連携も始まっており、新たな概念や価値を創出して、デジタルの世界に未曽有の地殻変動を引き起こす可能性も秘めています。 

そこで今回は、メタバースが台頭している背景や実例、さらにブロックチェーンとの融合例などについて詳しく解説します。 

メタバースとは? 

メタバースとは、ギリシャ語で「超越した」とか「先へ」を意味する「メタ」と英語で「宇宙」を意味する「ユニバース」を合わせた造語です。仮想空間上でアバターを使って好きに動きながら仕事をしたり、遊んだり、同じくアバターとなった他人との交流などが行えます。 

メタバースの概念は今に始まったものではなく、1990年代から存在しましたが、それはあくまで小説の世界にかぎったファンタジックなものでした。よって、今のメタバースとは異なるうえ、実は現在もメタバースの正確な定義は存在しません。 

インターネット以来のインパクトをもつ巨大デジタルプラットフォームとの呼び声は高いですが、今は、さまざまな企業や開発者が仮想空間を使って手探りで思い思いのサービス提供をしている段階。今後の展開がどうなるかは、まったくの未知数です。 

現にメタ(元フェイスブック)が、従来のSNSではなくメタバースを事業の主軸に据えると発表しても、強く注目されている反面、「いったい何ができるのか」といった懐疑的な見方も少なくありません。5~10年かけてメタバースの普及を目指すとして、2021年は約1兆1千億円を投資、メタバース開発要員としてすでに1万人を雇用しています。ただ、SNSのときのようなはっきりとしたビジネスモデルが提示できないところに、メタバースの曖昧な現状があるといえるでしょう。 

メタバースが台頭している背景  

メタバースという言葉は、1992年に発表された、アメリカのSF作家、ニール・スティーヴンスン氏の『Snow Crash』という小説の中で生まれました(国内でも1998年に出版されています)。2003年には、アメリカのLinden Lab社がリリースした「セカンドライフ」というオンラインゲームで、『Snow Crash』のメタバースの世界観が具現化されます。ユーザーは、仮想世界の街でショッピングや商売をしたり、ライブを開催したり、土地の購入まで可能で、2006年頃には日本にも上陸し、一定の人気を博しました。しかし、やがてブームは過ぎ、メタバースがとりたてて世に広まることはありませんでした。 

潮目が変わり始めたのは、2014年、当時のフェイスブック(以下メタ)が、仮想現実(VR)ヘッドセットとゲーム開発を手掛けるオキュラス社を買収してからです。メタは、オキュラスを傘下におさめて、仮想現実をゲーム以外のビジネスや教育、エンタメなどにも広げようと画策します。具体的には、「Oculus Room」や「Facebook Spaces」といったアバターを介してやり取りできる会議システムを発表しました。しかし、いずれも広くは必要とされず、多くのユーザーを獲得するにはいたりませんでした。ただ、世界有数の巨大テックであるメタの動きは、その都度ニュースとなるため、メタバース自体の認知度は確実にあがったといえるでしょう。 

と同時に、VRゲームやメタバースの世界を演出するゲームの人気が高まりはじめ、GPSや5G、遠隔でもリアルな接触感覚が楽しめるパプティクスなどの技術やインフラが充実。極めつけに、新型コロナの世界的流行によりテレワークのニーズが急激に高まると、仮想空間への関心度も大幅に増加しました。そして、2021年10月末、SNSを主軸としたビジネスに限界を感じているメタは、このタイミングで本格的にメタバースへの事業化を発表します。 

この直後には、ゲーム向け半導体大手エヌビディア、ゲームソフト開発のユニティなど、メタバース関連株が上昇しました。この動きは、いまだ実態ははっきりしないものの、メタバースのゲームチェンジャーとしての可能性に対する市場の期待が大きいことを如実に表しています。 

メタバースの世界観がわかる実例 

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それではここから、現段階でメタバースの世界観がわかる具体的な事例をご紹介しましょう。 

メタバースの可能性を体現した『フォートナイト』!

ユーザー数が3億5千万人にも達した世界的な人気ゲーム、Epic Gamesの『フォートナイト』は、島で生き残りをかけて戦うバトルゲームです。戦いながらも仮想空間で資材を集めて身を守るための基地を建設できます。モードを変えれば、自分の島を作って、そこでゲームを作成、ルールも自主設定のうえフレンドを招待することも可能。さらに他のモードでは映画を観たり、ボートレースをしたり、人気アーティストのライブを開催することもできます。 

すべて仮想空間で展開されるものの、メタバースに期待されるコミュニティ要素やクリエイティビティ、リアルワールドのようなライブ感が満載です。他に、ニンテンドーの『あつまれ動物の森』もメタバースの世界を体験できます。アバターを使って無人島で自由気ままに生活空間を作ったり、仲間とコミュニティを立ち上げて交流したりすることもできます。発売されるや否や異例の大ヒットとなり、その人気ぶりはとどまるところを知りません。 

オンラインバーチャルライブで新たなライブ感を体験!

メタバースはエンタメ界にも新たな風を吹かせています。その一つが仮想空間でのバーチャルライブです。 

バーチャルライブは、とくにコロナ禍以降、アメリカをはじめヨーロッパや日本でも続々と開催されています。モーションキャプチャーを使ってアバターとなったアーティストが、リアル感満載のパフォーマンスを披露。ファンもアバターで仮想空間上のライブ会場に足を踏み入れることができます。自分とそっくりにしたり、髪型や背格好を変えて好きなスタイルで参加したり、舞台上のアーティストと目があっては掛け合いを楽しむことで、インタラクティブなライブ感も味わえます。 

メタの会議サービス『Horizon Workrooms』で現実さながらのバーチャル会議ができる!

メタが社名変更を発表する約2か月前にβ版としてリリースしたバーチャル会議システム『Horizon Workrooms』が話題です。VRのヘッドセットを使って最大16名が仮想空間でのバーチャル会議に参加できます。 

手や首の動きがすべて本人と連動、参加者同士が目線を合わせながらやり取りできるので、あたかも同じ場所にいるかのような錯覚を覚えます。自分のPC画面を仮想空間上で参加者とシェアでき、仮想空間内のホワイトボードに字や図面などをリアルタイムで自由に書き込めます。よってプレゼンも可能。画面上で顔を見ながらのビデオ会議とは一線を画すリアル感満載の世界が広がります。 

参考:Horizon Workroomsの使い方とできること解説します!

デジタルツインとの違い  

メタバースと似ているようでまったく異なる技術に「デジタルツイン」があります。デジタルツインは、仮想空間ではなく、現実の都市や街並みという物理空間情報をそのままデジタル空間上に双子(ツイン)のようにコピーします。 

この技術使えば、渋谷の町全体をそのままデジタル空間に再現、交通機関や水道、電気などのインフラの動きや流れ、工事の状況や洪水の時の水の流れなどをシミュレーションする、といったことが可能です。 

あくまで現実の世界がベースとなるデジタルツインと、仮想空間でアバターを起点としてさまざまな行動を繰り広げるメタバースとは、まったく切り口の違う技術です。デジタルツインは、活用の仕方がはっきりしていて実用例も豊富という面で、可能性が未知に富んだメタバースとは異なるともいえるでしょう。 

メタバースの応用 

続いては、メタバースの将来的な可能性をより強く感じることができる応用例をご紹介しましょう。 

メタバースとブロックチェーン 

メタバースが実用性のあるプラットフォームに成長するためには、何らかの形でマネタイズ(収益化)できるシステム作りが不可欠です。そのヒントとなるのが、ブロックチェーンの活用です。 

とくに仮想通貨イーサリアムをベースとしたNFT(非代替性トークン)を使えば、あらゆるデジタルコンテンツに所有権を付与できます。ブロックチェーン技術によって全取引が記録され、複数の端末で同じ情報を共有・管理されるため、改ざんも偽造もほぼ不可能です。 

この技術を活用すると、仮想空間の土地やアート作品に所有権を設けて売買することが可能になります。たとえば、仮想空間上に自分の土地を買ってライブハウスを作り、そこに有名アーティストを招待してコンサートをするとしたらどうでしょう。そのアーティストと専属契約を結んで、他のバーチャル空間では一切露出はせず、自分のライブスペースだけを活動の場にしてもらう。これができれば、ライブハウスとしてのステータスが上がり、多くのファンを招待することでマネタイズが可能になります。ブロックチェーンを活用すれば、一見何の価値もないように見えるデジタル上の仮想スペースにもビジネスとしての可能性が際限なく広がるのです。 

ほかにも、仮想空間上でNFTアートの個展やオークションをしたり、ゲームのキャラクターが身につけたファッションアイテムや武器などを売買したりすることもできます。仮想通貨イーサリアムは、現在ビットコインに次ぐ第2位の人気を博します。しかも、メタが社名変更を発表したわずか10日後に取引市場で最高値をマークしました。今後、メタバースとブロックチェーンの関係性がより深まり、投資の対象として一定の評価を得れば、デジタル市場に大きな地殻変動が起こることも期待できます。 

参考:NFTの最新動向を詳しく解説!

メタバースのプラットフォームをご紹介

メタバースとNFTをつなげたプラットフォームがすでにいくつか登場しているのでご紹介しましょう。 

Decentraland(ディセントラランド)

Decentralandは、独自トークンMANAで土地やアバター用のアイテムを購入したり、転売したりできる、ブロックチェーン技術ベースのメタバースプラットフォームです。 

2021年8月には、国内のプロダクション「アソビシステム」が、Decentraland上に「グローバル文化都市トーキョー」を構築。日本からグローバルなデジタル文化の発信を目的とし、国内外のさまざまなクリエーター・パートナー企業と事業展開を行う「メタトーキョー」をスタートさせました。 

The Sand box(ザ・サンドボックス)

The Sand boxも仮想通貨イーサリアムをベースとしたメタバースが体感できるNFTゲームです。 

ユーザーは、アバターを使って謎解きやアイテム収集などさまざまな行動を楽しめます。ゲーム内でキャラクターやアイテムを自由に作れるうえ、3Dゲームも自作可能。しかも、キャラクターやアイテムは、NFTとしてマーケット上で売買できます。 

ブロックチェーンとメタバースの融合で、リアル世界で自作した洋服をAmazonやメルカリなどで売るごとく、自分が仮想空間上で息を吹き込んだキャラクターを売るという、今までにない楽しみ方が可能です。 

メタバースの今後の動向 

ゴールドマンサックスの予測では、2025年までにVR市場は300~950億ドル(約3兆4千億円~10兆7千億円:1ドル113円で換算)まで拡大する可能性がある、とされています。 

参照:Decentraland (ディセントラランド) とは?分散型VRプラットフォームの使い方を徹底解説 

インターネットやeコマース(仮想商店)も、黎明期は一部の専門家や事業者を除いて、その概念や世界観を理解する人はほとんどいませんでした。しかし、具体的なプラットフォームやサービスがいくつも登場し、デバイスやネット環境の進歩にも後押しされながらじわじわと浸透していった経緯があります。そしてある時期にクリティカルマス(臨界質量)を迎えると、そこからは一気に広範囲にわたって広がりを見せました。 

メタバースも、数々の試行錯誤を繰り返しながら、さまざまなサービスが生まれては消えて、いずれ新たなビジネスモデルが構築される可能性は十分にあります。すでにブロックチェーンとの融合により、今までにないニューパラダイムが開拓されようとしているのがよい例でしょう。 

仮想通貨に関しては、各国とも法整備が現実に追い付かず、大暴落のリスクも大いにはらんでいる状況です。しかし、この環境が国際的に改善され、デジタル技術の向上や5G回線の普及がさらに進めば、メタバースが一部の人や企業の夢物語ではなく、現実世界になくてはならない基幹ツールとしてのステータスを獲得する日もやってくるかもしれません。 

まとめ  

メタバースについて基本的なことから、実例、さらに今後の動向について解説しました。 

メタバースの概念は、多くの人たちにとってはまだ雲をつかむ様な曖昧なものでしょう。アバターに自分を投影して仮想空間で自由に行動するといわれても、SFかゲームのようにしか感じないかもしれません。 

しかし、今や国内のミレニアル世代(1980~1995年生まれ)やZ世代(1996~2010年生まれ)の人たちの数は、6,000万人近くに及び、人口の約半分を占めるまでになりました。これらデジタルネイティブの多くは、仮想空間やアバターをさほど奇妙に感じず、むしろイノベーションによってメタバースの世界が実現することを抵抗なく受け入れると考えられます。サービスを開発・提供する側と、それを受け入れるユーザー側が上手くかみ合い、新たな世界観を育てようとする機運が高まれば、メタバースによるゲームチェンジの実現も決して夢ではありません。 

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