近年、DeFi(分散型金融)とCeFi(中央集権型金融)は、暗号資産やブロックチェーン技術の発展に伴い、世界中で急速に注目を集めています。両者は金融の在り方を大きく変える可能性を秘めており、日本においても投資家や企業の関心が高まっています。
では、DeFiとCeFiの違いとは何でしょうか? それぞれの仕組みやメリット・デメリットを理解することは、これからのデジタル金融を考える上で欠かせません。
本記事では、DeFiとCeFiの基本概念からその違い、さらに今後の金融市場に与える影響や将来の展望まで、わかりやすく解説します。
DeFiとは?
DeFi(Decentralized Finance・分散型金融)とは、ブロックチェーン技術の上に構築された金融アプリケーションやサービスのエコシステムを指します。
DeFiの最大の特徴は、銀行や金融会社、中央集権型取引所といった従来の仲介機関を完全に排除する点にあります。その代わりに、すべての取引はユーザー同士が直接、スマートコントラクトを通じてP2P(ピア・ツー・ピア)で行われます。
DeFiの代表的なユースケースには以下が挙げられます:

- 貸付と借入(Lending & Borrowing)
- 分散型取引所(DEX)
- ステーブルコイン(Stablecoin)
- イールドファーミング(Yield Farming)
- 分散型保険
このように、分散型・透明性・非許可型という本質を持つDeFiは、何世紀も続いてきた従来型金融モデルに挑戦する「金融革命」を起こしています。ユーザーは自ら資産をコントロールでき、世界中の何十億人もの人々に新しい金融アクセスの扉を開いているのです。
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CeFiとは?
DeFi(分散型金融)に対して、CeFiは Centralized Finance(中央集権型金融) の略です。これは、金融サービスが中央の仲介機関や組織によって提供・管理されるモデルを指します。このモデルは新しいものではなく、日常的に利用している伝統的金融(TradFi)の基盤そのものです。銀行、証券会社、信用機関などがその代表例です。
暗号資産の世界においては、CeFiは 中央集権型取引所(CEX) を通じて表れます。たとえば Binance、Coinbase、Kraken などが挙げられます。これらのプラットフォームを利用する際、ユーザーは自分の資産や個人情報を企業に委ねることになります。その企業が資産管理、セキュリティ、取引実行の責任を負います。
CeFiの主な特徴
- カストディ型(Custodial)
ユーザーは自分のウォレットの秘密鍵(private key)を直接管理しません。その代わりに、取引所が資産を管理します。初心者にとっては利便性が高い一方、取引所がハッキングや破綻に遭うと資産喪失のリスクがあります。 - 本人確認(KYC)の要求
ほとんどのCeFiプラットフォームは、KYC(Know Your Customer:本人確認)やAML(Anti-Money Laundering:マネーロンダリング防止)のプロセスを要求します。そのため、ユーザーは身分証明書(マイナンバーカード、パスポートなど)を提出して本人確認を行う必要があります。 - 中央集権的な運営
上場する資産、取引手数料、運営方針などの決定は、すべて管理企業が行います。 - カスタマーサポート
CeFiの大きな利点は、専門のカスタマーサポートが存在する点です。ユーザーがトラブルに遭遇した場合、サポートを受けることができます。
CeFiで一般的に提供されるサービスには、現物取引(Spot Trading)、デリバティブ取引(先物・オプション)、レンディング(貸付)、そして取引所のプラットフォーム上で利用できる ステーキングやセービング(利息付き預け入れ) があります。
例えば、BinanceにUSDTを預けることで、銀行の定期預金に似た形で日次の利息を受け取ることが可能です。
CeFiは、数百万人ものユーザーが暗号資産市場へ容易かつ親しみやすい方法でアクセスできるようにする重要な橋渡しの役割を果たしており、特にDeFiの複雑な操作に慣れていない人々にとって大きなメリットとなっています。
DeFiとCeFiの基本的な違い
全体像を理解し、自分に合った選択をするためには、DeFiとCeFiを核心的な観点から比較することが重要です。両者の違いは単なる技術面にとどまらず、運営哲学、信頼性、ユーザー体験にまで及びます。

セキュリティと信頼性
資産をどこに預けるかを決める際、最も重視される要素の一つがセキュリティと信頼性です。
CeFiの場合、セキュリティは運営企業によって保証されます。大手取引所は多層的なセキュリティ対策、専門のセキュリティチーム、さらにはユーザー資産を守るための保険基金(例:BinanceのSAFU)に積極的に投資しています。とはいえ、過去にはCEXがハッキングを受け甚大な被害を出した事例も多く、さらにFTXのように中央集権的な組織が破綻した場合、ユーザーが資産を失うリスクもあります。CeFiの信頼性は、結局のところその企業の信用力と運営能力に依存しているのです。
一方DeFiでは、セキュリティはスマートコントラクトのソースコードとブロックチェーンの分散性に基づいています。ユーザーは秘密鍵を通じて自らの資産を完全に管理でき、「Trust(信頼)するのではなくVerify(検証)する」という哲学が根底にあります。
しかし、DeFiが常に安全というわけではありません。最大のリスクはスマートコントラクトのコードに潜む脆弱性であり、ハッカーに悪用され資産を奪われる可能性があります。さらに、ラグプル(詐欺的プロジェクト)やプロトコルへの攻撃も常に潜在的な脅威です。DeFiで資産を守るためには、高度な技術知識と慎重さが不可欠です。
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アクセス性
CeFiは、特に初心者にとって親しみやすく簡単に利用できる体験を提供します。口座開設、本人確認(KYC)、銀行口座からの法定通貨(フィアット)入金といったプロセスは、できるだけシンプルに設計されています。CEX(中央集権型取引所)は、伝統的な金融と暗号資産の世界をつなぐ「ゲートウェイ」としての役割を果たしています。ただし、このアクセス性は各国の規制によって制限される場合があります。
一方DeFiは、完全にオープンで許可不要のアクセス性を実現しています。世界中の誰でも、暗号資産ウォレット(例:MetaMask)とインターネット接続さえあれば、DeFiエコシステムに参加することができます。KYC手続きも検閲も存在しません。これにより、銀行口座を持たない人々や金融インフラが整っていない地域に住む人々にとっても、真の意味での金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)が可能になります。
しかし課題もあります。DeFiでは利用のハードルが技術面にあり、初心者はプロトコルとのやり取りに戸惑いや難しさを感じることも少なくありません。
資産の管理とコントロール
CeFiの場合、ユーザーは自分の資産の管理を第三者に委ねることになります。取引所が秘密鍵を保有しており、法的機関からの要請や独自のポリシーによって、アカウントを凍結したり取引を制限したりする権限を持っています。つまり、ユーザーは実際には資産を直接所有しているのではなく、取引所から「返還されるという約束」を所有しているに過ぎません。
一方DeFiでは、ユーザー自身が秘密鍵を完全に保有・管理します。これはセルフカストディ(自己管理)モデルと呼ばれます。、秘密鍵を持たない限り、誰も、どの組織も資産に介入したり、凍結したり、差し押さえたりすることはできません。
ただし、「絶対的な権限」には「絶対的な責任」が伴います。秘密鍵を紛失したり詐欺に遭った場合、資産は永久に失われ、取り戻す手段は存在しません。
ユーザーエクスペリエンス(UX)
CeFiのプラットフォームは、多くの場合直感的で使いやすいUI・UXを備えており、大衆向けに最適化されています。注文発注、チャート閲覧、ポートフォリオ管理といった機能は、従来の株式取引アプリに近いデザインで設計されています。さらに、24時間365日のカスタマーサポートにより、ユーザーはトラブルが発生しても迅速に解決できます。
一方DeFiのユーザー体験は、近年大きく改善されてきたものの、依然として一般ユーザーにとっては課題が残っています。DAppを利用する際には、ウォレット接続、取引確認、ガス代(ブロックチェーン上の手数料)の支払いなどのステップが必要です。また、スリッページ(価格変動による滑り)やインパーマネントロス(一時的損失)といった概念は初心者には分かりづらいかもしれません。
しかし、レイヤー2ソリューションやスマートウォレットの進化により、DeFiのUXは改善が進んでおり、取引コストの削減や利便性の向上が期待されています。
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DeFiとCeFiの未来
デジタル金融の未来は、DeFiとCeFiの融合と協力によって形作られると考えられています。多くの専門家は、両者の長所を兼ね備えたハイブリッドモデルが発展すると予測しています。つまり、CeFiが持つ「使いやすさ・高い流動性・規制遵守」と、DeFiが提供する「透明性・グローバルなアクセス・自己主権性」が統合されるのです。
今後の主要なトレンド
- 伝統的金融機関のDeFi参入
銀行や大手投資ファンドがDeFiプロトコルを積極的に探索・導入しており、パーミッション型DeFi(permissioned DeFi)のような新しい金融商品が登場しています。 - CeDeFi(Centralized Decentralized Finance)の台頭
中央集権型取引所(CEX)がDeFiサービスを自社プラットフォームに直接統合し、ユーザーが慣れ親しんだUI上で、イールドファーミングやステーキングなどの機会にアクセスできるようになっています。 - 技術革新の進展
レイヤー2ソリューション、ゼロ知識証明(ZKP、例:zkTLS)、人工知能(AI)の発展により、DeFiはより高速・低コスト・高セキュリティ・スマートなエコシステムへと進化していきます。 - 明確な規制枠組みの整備
日本を含む各国がデジタル資産に関する法的枠組みを整備しつつあります。これにより、安全で透明性の高い環境が生まれ、個人投資家と機関投資家の双方による広範な受け入れが促進されるでしょう。
DeFiとCeFiの並行的な発展と相互作用は、より多様で柔軟、かつ効率的な金融エコシステムを生み出します。それは、異なるニーズやリスク許容度を持つ幅広いユーザー層に対応する、新しい時代の金融インフラとなるでしょう。
DeFiとCeFiの詳細比較表
項目 | 分散型金融 (DeFi) | 集中型金融 (CeFi) |
仕組み | スマートコントラクトとブロックチェーンに基づき、中間業者が存在しない。 | 中央集権的な仲介機関(企業、取引所)が管理。 |
資産の管理権 | ユーザーが秘密鍵を通じて完全に自己管理(セルフカストディ)。 | 仲介機関が資産を管理(カストディアル)、ユーザーは預ける立場。 |
セキュリティ | スマートコントラクトのコードとブロックチェーンの安全性に依存。 | 仲介機関のセキュリティシステムや信頼性に依存。 |
透明性 | 非常に高い。 すべての取引はブロックチェーン上で公開される。 | 低い。 内部の運営は公開されないことが多い。 |
アクセス性 | オープンで許可不要。 インターネットさえあれば誰でも利用可能。 | アカウント登録と本人確認(KYC/AML)が必要。 |
匿名性 | 高い。 ウォレットアドレスだけで取引可能。 | 低い。 個人情報が必要。 |
コスト | ガス代が変動し、一部のネットワークでは高額になることもある。 | 規定手数料が中心で、比較的安定して低い。 |
取引速度 | ブロックチェーンの処理速度に依存し、遅い場合がある。 | 高速。内部取引は即時に近い。 |
カスタマーサポート | ほぼ存在せず、主にコミュニティに依存。 | 専門サポートチームが24/7対応。 |
主なリスク | スマートコントラクトのバグ、フィッシング、詐欺、秘密鍵の紛失。 | ハッキング、取引所の破綻、運営側による資産凍結・持ち逃げ。 |
代表例 | Uniswap、Aave、Compound、MakerDAO | Binance、Coinbase、Kraken、BlockFi |
まとめ
DeFiとCeFi は、デジタル金融の未来を形作る上でどちらも重要な役割を担っています。最大の違いは「委託と管理」という要素にあり、それによってセキュリティ、透明性、ユーザー体験におけるそれぞれの長所と短所が生まれます。CeFi はシンプルさとアクセスのしやすさを提供する一方で、DeFi はグローバルな金融の自由を実現しますが、より高度な技術的知識が求められます。
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