DAppとは?注目されている理由や具体例を詳しく解説!

インターネット上には、ブロックチェーンをベースに作られたアプリケーションの「DApp」が続々と登場しています。近年、おもに売買取引を目的とした従来の暗号資産(仮想通貨)ではなく、スマートコントラクトを活用してさまざまな機能を持たせることが可能となったことで、NFTゲームや次世代型の金融サービスDefiなど、今までにない画期的なコンテンツやシステムがいくつも生まれました。 

DAppは、環境さえ整えば誰でも開発できるので、参入者の顔ぶれは大手企業のみならず、スタートアップから個人にいたるまで実に多彩です。しかも、業界も多岐に渡り、ユーザビリティが向上すれば、さらに多くの分野でDAppを活用した質の高いサービスが誕生すると考えられます。 

そこで今回は、DAppの基本的な説明から、具体的な使用例、さらにDAppが抱える問題や今後の展望についてお伝えします。 

DAppとは

DAppとは、Decentralized Applicationの略で、日本語では「分散型アプリ」を意味します。 「分散」という言葉を冠している理由は、ブロックチェーン(分散型台帳)を基盤として構築されるアプリケーションだからです。 

通常のアプリは、特定の開発者が販売したりWeb上で運営管理したりします。ところがDAppは、特定の管理者が存在せず、複数のノード(デバイス)で分散管理され、基盤となる暗号資産を購入すればだれでも利用可能です。すべてのトランザクション(取引)は、ブロックチェーン上に記録され、一旦デプロイされると管理者すべての合意がなければ書き替えできないため、対改ざん性に優れています。 

DAppは、スマートコントラクトを備えるイーサリアムやイオスといった暗号資産上でのみ開発できます。スマートコントラクトとは、あらかじめプログラミングされた一定の条件に対して決まった取引を自動で行う仕組みのことです。ビットコインのような暗号資産は、おもに投資目的で売買されたり、一部の商品やサービスを購入するのに使われたりするのみです。ところが、スマートコントラクトを備えた暗号資産を使えば、一定のルールのもとにゲームが作れたり、融資や決済、保険金の支払いなど、幅広い金融サービスを提供したりもできます。 

DAppの特徴と注目されている理由  

DAppの代表例として、ブロックチェーンゲームがあります。ブロックチェーンゲームは、NFTゲームとも呼ばれ、ブロックチェーン上でキャラクターやアイテムの売買が可能です。その仕組みについて説明しましょう。 

主としてイーサリアムのようにスマートコントラクトを備えた暗号資産を使えば、ブロックチェーン上に代替不可能なトークンを作りだすことができます。これをNFT(Non- Fungible Token)と言います。 

トークンとは、お金の代わりになる引換券やクーポンのようなものです。画像やデジタル絵画、動画などのデジタルコンテンツは、パソコンやスマートフォン上で無数にコピーできるため、従来は、所有権を特定したり、資産価値を付与したりすることが極めて困難でした。ところが、ブロックチェーン上であれば、偽造や改ざんはほぼ不可能なため、デジタルコンテンツにトークンという形で一対一で紐づけして唯一無二の価値を与えることができます。これがNFTです。 

さらにNFTの特筆すべき点は、デジタルコンテンツに資産性を付与できるだけでなく、すべての売買履歴が記録されるうえ、二次流通の売上の一部を原作者の報酬にできる点です。これはリアルアートの世界では極めて難しい問題でしたが、スマートコントラクトを活用すれば可能です。 

NFTは、デジタルコンテンツでありながらリアルアートの彫刻や絵画のように扱うことができるとあって、魅力ある作品には、莫大なお金がつぎ込まれるようになりました。一例として、2021年3月にクリスティーズで、Beeple氏のデジタルアート『Everydays:The First 5,000 Days』が約75億円で落札された話はあまりにも有名です。 

ここで話をNFTゲームに戻しましょう。DAppで人気が沸騰しているNFTゲームも主としてイーサリアム上で開発・稼働するため、ゲーム中で育てたキャラクターや独自アイテムを非代替性トークンとしてデジタルアートと同じように売買できます。自分で描いたキャラクターをそのままカードゲームにしてバトルさせたり、NFTとして売ったりするタイプのゲームもあります。また、コミュニティー内での投票機能が付与されるガバナンストークンを手にすると、自分の考えでゲーム内のルールを作る権限を手にできるので、さらに踏み込んだ楽しみ方が可能です。これらの売買取引やルール作成は、従来のソーシャルゲームやオンラインゲームなどにはなかった画期的なシステムで、ユーザーにとっては非常に醍醐味があり刺激的です。 

フィリピンをはじめとする東南アジアの若者のなかには、NFTゲームで魅力あるキャラクターを育て、イーサリアム市場で売って生活費や学費に充てる例もあります。そのような若者に資金を与えて、稼ぎを分配するスカラーシップ制度に注力する投資家もいて、先のデジタルアートとは別の方向からNFT市場の盛り上がりを後押ししています。 

NFT市場が注目され、投資対象として人気が高まれば、それにともなって新たなDAppが開発されます。そこから魅力あるキャラクターが輩出されれば、さらにNFT市場にポジティブな影響を与えるので、DAppとNFTをめぐる好循環が生まれるのです。 

参考:人気沸騰のNFTゲームって何?本当に稼げるの!

NFTゲーム以外のDAppの具体例  

NFTゲームに勝るとも劣らないDAppの具体例として、もっともホットな話題をお伝えしましょう。 

2021年11月24日、国内のメガバンクをはじめとする74の企業連合が、2022年後半をめどにデジタル通貨を実用化すると発表しました。システムをブロックチェーンで構築し、銀行振り込みの手間を省いて当事者同士が直接つながって(P2P方式)24時間取引と即時決済を可能にします。まずは企業間の送金や決済にはじまり、自治体での納税や給付金の配布などをスマートコントラクトにより自動で行う予定です。これが実現すれば、省人化と手数料の大幅な削減が期待できます。 

このように、DAppは、全トランザクションの記録と対改ざん性に優れているため、取引の透明性とセキュリティの確保が何より重要な金融サービスとの親和性がとても高いです。現に、銀行をはじめとする金融機関を介さずに、送金や決済、融資などを行うDefi(分散型金融)は、2020年~2021年の約1年で市場規模が約5倍、11兆円近くに急拡大しています 

参照: 日本経済新聞

Defiのサービスは、身分証明や与信審査が不要な上、銀行より金利が高いことが多く、送金や決済がスピーディーで手数料が安価とあって、近年DAppのなかでもひと際注目されています。 

参考:Defiとは?仕組みや注目されている理由を徹底解説! 

DAppの抱える課題  

Dappは、大変魅力のあるアプリケーションですが、解決すべき課題も抱えています。 

具体的には、「スケーラビリティ問題への対応が必要」と「バグの修正が困難」の2点です。 

一点目については、多くのDAppの基盤であるイーサリアムのブロックチェーンは、ユーザーが増えると処理が遅れる傾向が強く生じます。1秒間に多くて15トランザクションほどしかさばけないため、取引が集中すると処理が追いつかなくなるからです。するとスピーディーな処理が特長のブロックチェーンの価値が半減します。くわえて取引が活発になると、ガス代という手数料の高騰も問題になります。 

イーサリアムは、不正アクセスを回避するために取引の度に手数料を設けていますが、多くの仮想通貨の中でもとくに高額なことがしばしば取りざたされます。例えば、500円のイーサリアムの取引に5,000円以上のガズ代が発生する場合もあり、多くのユーザーの参入障壁になりかねません。 

ただ、このスケーラビリティ問題を解決する目的で、Polygonという、イーサリアムと互換性があって処理速度が速く、コストがかからない仮想通貨が実装され始めています。すでに、多くのNFTゲームがPolygon上で稼働しており、これが他のDAppに普及していけば、スケーラビリティ問題の大幅な解消につながるでしょう。 

二点目については、DAppはブロックチェーン上で稼働していることから、一旦デプロイすると途中でプログラム変更するのが極めて難しくなります。バグが発生してもコミュニティーやユーザー全体の合意形成がなければ修正は不可能なため、リリース前の入念な確認作業が負担になりかねません。 

DAppの今後  

CoinGeckoの2021年の四半期レポートによると、2021年現在のNFTの市場規模は220億ドルを上回っています (Coingecko)。今のところそのけん引役は、NFTアートとNFTゲームです。 

NFTゲームの人気ぶりは確実に高まっているものの、そのアクティブユーザーは、イノベーターや投資家が多くを占め、ようやくアーリーアダプターの手に少しずつ浸透してきているところです。そこには、仮想通貨への警戒感、慣れないUIへの戸惑いなどがあり、とくに国内では未だに市民権を得られていないのが現状です。ただ、イーサリアムは無料のオープンソースのため、開発のハードルは決して高くありません。よって、もしスケーラビリティ問題が確実に解消され、安心感が担保されれば、NFTゲーム人気は今以上に高まる可能性は十分にあるでしょう。 

くわえて、先述のように、Defiの市場規模は約11兆円にまで膨れ上がっており、その勢いには目を見張るものがあります。ただ、こちらについても日米欧の預金取扱金融機関の現預金額と比べると、わずか0・1%と、今のところ非常に限られたマーケットにすぎません(日本経済新聞2021・10・18朝刊号)。しかし、2022年に予定通りデジタル通貨が導入されたり、金融機関を介さない低コストでスピーディーな取引が可能なDefiの利便性が広く理解されたりすれば、その市場規模はさらに拡大すると期待できます。 

これらNFTゲームとDefi、およびNFTアートの動向がポジティブに影響しあって、イーサリアムブロックチェーンへの信頼度と需要が高まれば、今後もさらに輪をかけて魅力的なDAppがリリースされることでしょう。 

まとめ  

DAppを開発するには、Solidityを代表とする特定の言語を使ってスマートコントラクトをプログラムする必要があります。Solidityは、オブジェクト指向の高級言語で初心者でも比較的容易にマスターできますが、国内では、ノーコードでもDAppが作れる世界初のツールが2021年中にもリリースされる話が出ています。 

くわえて、イーサリアムだけでなく、質の高いDAppを低コストで開発できるイオスやネム、ビットコインキャッシュといった新たな仮想通貨の登場で、DApp開発がしやすい環境は確実に整ってきています。 

これらの背景を鑑みると、DAppの存在感は、今後さらに増すと期待できるため、新たにどのようなアプリケーションが登場するかが、楽しみです。 

レリパでは、DApp開発をお手伝いいたします。親日派で経験豊かなエンジニアが、NFTゲームやDefiなど、人気沸騰中のアプリケーションを開発のうえ、リリースからアフタケアまで責任をもって後押しします。これからDApp市場に打って出ようとお考えのスタートアップの皆さまがおられましたら、ぜひお気軽にご相談ください。