ECサイトでコンバージョン率を上げる手法として注目されている「ライブコマース」。臨場感があり、商品やサービスをリアルタイムで売り込めるとあって、国内でも採用する企業が増えています。中国発祥といわれるライブコマースですが、どの様な背景があって国内でも普及してきたのでしょうか。導入する前と後で、収益にどれくらいの差が出るのかも気になります。
そこで今回は、ライブコマースの基礎から、ライブコマースが重要な理由やメリット、さらに導入するにあたっての留意点について詳しくお伝えします。これからユーザーの心に刺さるECサイトを構築し、さらに多くのインサイトを掘り起こして売上を向上させたい経営者やEC担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
ライブコマースとは?
ライブコマースとは、ECサイトにライブ配信機能を融合させた販売スタイルです。ECサイトの多くは、商品画像と商品説明のテキストで構成されていますが、ライブコマースは商品説明動画を時間を決めてリアルタイムで配信しながら直接ユーザーに売り込みます。さらにサイト訪問者は、動画を観ながらチャットで質問できる点がライブコマースの最大の特長です。
従来の通販番組は、ショップ側が一方的に必要と判断した情報だけを配信して終わり、というものが大半でしたよね。しかし、それではあっという間の説明でよく理解できないとか、疑問点が解消されずに悶々として注文にいたらず、というケースも良くありました。ところが、ライブコマースはいつでもチャットで聞きたいことがきけるので、インタラクティブで訪問者の気持ちをスッキリさせられる分、顧客満足度アップに寄与しています。もちろん気に入れば、即購入手続きが可能です。
また、ライブコマースにはさまざまな配信形式があります。専用のプラットフォームもあれば、自社サイトにYouTubeをくみ込んだもの、他にもFaceBookやインスタグラムなどの無料配信をアカウントと連携させて配信するスタイルもあります。
さらに、ライブコマースでは配信者もポイントです。ショップの経営者やスタッフがみずからカメラに向かって商品説明や疑問に答える場合とタレントやユーチューバーなどのインフルエンサーを使って、広範囲のユーザーに訴えかけるやり方もあります。
ライブコマースが重要な理由
ライブコマースの発祥とされる中国商務部の調査では、2020年の上半期だけで中国国内でのライブコマースイベントの開催数は1000万回、活躍するキャスターは40万人、視聴回数500億回、販売商品2000万アイテム、とその活況ぶりが報告されています。日本でライブコマースが本格的に浸透し始めたのは2017年ころからで、中国ほどではありませんが、導入例も増えつつあります。そこで国内でライブコマースが重要視される理由について解説しましょう。
(参照:https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/a96bbe55659f00d6.html)
デジタルシフトに対応するため
日本では昭和の時代からテレビやラジオをつかった通販番組が人気で、平成に入ると、その勢いはますます加速しました。ところが、2000年代に入りインターネットが普及すると、ECサイトによる販売手法が徐々に広がり始めます。それでも利用者は一部の熱心なネットユーザーに限られ、通販利用者の多くは電話やファックスによるアナログ的な注文方法から脱却することはありませんでした。
しかし、2010年以降、スマホが急激に普及し始めると状況は一変。デジタルユーザーの増加とAmazonや楽天などのECモールの台頭が相まって、ネット通販人気が爆発的に増え始めます。そして、分野を問わず多くの商品がEC対応により高評価を得はじめたため、ECサイトの質の向上はマーケティングのうえで大切な戦略の一つとなったのです。また、時を同じくしてTwitterやインスタグラムなどのSNSユーザーやYouTubeなどの動画配信サービス視聴者が急増したことも手伝って、これらのツールで簡単に配信できるライブコマースに多くの日本人経営者が目をつけました。
非接触型の接客のため
ライブコマースが重要視されるようになった理由として、2020年初頭からの新型コロナウィルスの世界的流行があります。世界の多くの国と同様、国内でも実店舗での買い物を控える風潮が蔓延するなど、あらゆる場面で非接触の対応が迫られるようになりました。そして大きく変化した購買行動に対応するためにも、実店舗ではなく、非接触が可能で安心・安全なECでの販売スタイルがブーム化し、ユーザーうけするECサイトの構築が大きな課題となったのです。その結果、臨場感があり、ユーザーへの訴求力も高いライブコマースが注目されるようになりました。
実店舗での売り上げ減を解消するため
新型コロナが流行すると、小売業や百貨店、観光業など、あらゆる業種で売り上げが激減しました。とくに実店舗での落ち込みは尋常ではなく、存続の危機にさらされた業者は相当数にのぼります。そこで実店舗での売り上げ減をカバーすべく、ECサイトでの訴求力を高める必要に迫られ、ライブコマースを導入する動きがさらに広がりました。
お客様のストレス解消のため
多くの日本人が昭和から続いたテレビなどの通販番組に慣れ親しんできました。ところが、通販の弱点として、直接商品に触れて使用感や風合いが確かめられない、という点があります。見た目だけでは、味も匂いも触り心地も実感できません。よって商品の価値判断はサイト訪問者一人一人の経験と勘に頼るほかなく、ある意味で危うい販売手法といえるのです。その証拠に、モノが届いてみると、想像とまったく違い、苦情を受けるケースが少なくありませんでした。
しかし、ライブコマースでは、チャットによるインタラクティブなやり取りにより、視聴者は実店舗で店員に話を聞きながら買い物をしているような一種の満足感が得られます。これにより、通販番組で抱きやすかった、商品に触れないなどのストレスの一部を解消でき、苦情などに到るケースが減少するため、ライブコマースによる販売手法が重要視されています。
ライブコマースのメリット
続いて、ライブコマースを導入するメリットについてお伝えしましょう。
チャットでやりとりできる
ライブコマースの一番の特徴は、チャットで直接お店とやり取りできる点です。通販番組の場合、聞きたいことがあってもその方法がないうえ、電話で問い合わせても話し中でつながらないケースが少なくありません。しかし、ライブコマースならその場で聞けるうえ、自分が問い合わせなくても他のユーザーの疑問への回答を聞けるので、サイト訪問者にとってはとても便利です。
客層を広げられる
ライブコマースの配信者にタレントやユーチューバーなどのインフルエンサーを起用すると、その人たちのファンをサイトに引き込むことができます。つまりタレンパワーをつかって、顧客層を広げられるので、今までになかった需要を喚起できる可能性が広がります。
返品率を下げられる
先ほど触れたように、ライブコマースの利点は、チャットにより多くの疑問をその場で解決できる点にあります。すると、商品やサービスに対するサイト訪問者の勝手な思い込みや勘違いを防ぐことができます。見た目がシルクでも、実際はコットンであったり、スチールではなくプラスチックなど、画面では伝わりにくい材質や触り心地、重さなど、細やかな情報が確認できるため、購入後の当て外れによる返品が減ります。購入者との行き違いによるトラブルは、そのままレビュー内容やショップ評価として反映されるため、一つ間違えると命取りです。よって、ライブコマースによる返品率の減少は、サイト運営者にとってはとても大きなメリットといえるでしょう。
初期費用が少なくて済む
ライブコマースは、配信そのものは無料でできるツールが数多くそろっています。しかも配信者にタレントなどを起用せず、すべて自社のスタッフでまかなえば、初期費用はほぼゼロ。その分、他のコアな業務に経営資源や大切な時間をあてることができるでしょう。
ライブコマースのデメリット
続いては、ライブコマースを導入する際のデメリットについて解説しましょう。
配信トラブル
ライブコマースはオンラインによるライブ配信のため、通信障害や機器トラブルによりやむをえず配信停止といったトラブルに陥るリスクがあります。すると当然、視聴者からのチャットにも応じられなくなるため、かえって不満を買う可能性があります。よって、事前にトラブル対応のマニュアル作りや訓練を行っておく必要があるでしょう。
不用意な発言による信用の失墜
ライブコマースはライブ配信のため、やり直しはきかない一発勝負的な面があります。よって、配信者が不用意な発言やウソの情報を流した場合は、評判や信用がなくなり、苦情や返品の原因になるなど大きなダメージを負いかねません。これらを回避するためには、入念なコンテンツ作りや事前のリハーサルが欠かせないでしょう。
ライブコマースを始める際の留意点
次にライブコマースを始めるにあたって、留意すべきことがらについて解説しましょう。
プラットフォームを決める
ライブコマースを導入するにあたって、まず最初に行うことは、配信するためのプラットフォームを決めることです。おすすめは、安価で優秀なエンジニアの技術が余すところなく活かせるオフショア開発で自社の専用プラットフォームを作製する方法です。他にも既存のECサイトのプラットフォームに組み込まれたものもあれば、YouTubeやFaceBookなどのSNSでアカウント登録して配信する方法もあります。何度も配信することになるので、自分たちが使いやすく配信しやすいシステムが一番でしょう。
売り込む商品を決める
ライブコマースでは、とくに相性の良い商品を選ぶのがおすすめです。例えば、コスメや美容系、ファッションアイテム、日用品などは、使い勝手が伝わりやすく、効果も目に見えてわかるため、訴求力が非常に高まります。グルメ系も配信者の表現力いかんでは、美味しさがしっかりと伝わるので相当の需要が期待できます。
一方、健康食品や筋トレグッズなどは、使用前・使用後の変化が曖昧でわかりにくいため、ライブコマースとの相性は今一つです。もちろん伝え方の工夫次第で結果は異なりますが、ライブコマースだけに過度に期待するのはリスクがあるでしょう。
質の高いコンテンツを作成する
ライブコマースを活用するからには、配信するコンテンツの質の高さを追求する必要があります。もしその内容がいま一つの出来だと、サイト訪問者の不評を買い、かえって売り上げを落とすはめになりかねません。
よって、具体的には、その商品ならではの特徴、使ったり食べたりした時の満足感、どのような人やシチュエーションに向いているか、おすすめの使い方、など長くなり過ぎない範囲でサイト訪問者の五感と購買欲に訴えかける内容を追求しましょう。
配信者を決める
配信者は、いわばその商品を売り込む「顔」です。視聴者からすると、その商品と配信者の見た目や放った言葉の一つ一つが頭の中でイメージとして強く結びつきます。よって、社内で適任者がいるのか、いなければ思い切ってタレントやインフルエンサーを起用するのか、についての見極めが必要です。もし、タレントやインフルエンサーを使った場合は、従来では取り込めなかったファン層や支持者を新たな顧客としてターゲットにできるので、メリットは大きいでしょう。
配信の時間帯を考える
ライブコマースは、常に生配信となるので、サイト訪問者からすれば視聴する時間が制約されます。よって、ターゲットの生活サイクルを考慮してベストなタイミングで配信する必要があります。例えば、新生児向けの商品を真夜中や早朝に配信しても、効果は極めて薄くなるでしょう。やはり主婦向けの商品なら昼間の時間帯の方が、圧倒的に効果が上がります。社会人や学生向けなら、深夜や土日・祝日の昼間などが良いかもしれません。そしてターゲットとなる属性の相手からの質問があれば、同じ疑問をもつ人たちが同時に視聴している可能性が高いので、さらにシナジー効果が狙えます。
購入しやすいUIを用意する
ライブコマースで視聴者に商品の良さを訴えたら、熱が冷めないうちに注文をしてもらえるような仕掛け作りも重要でしょう。その最たるものが、サイト画面の操作性です。購入ボタンがわかりにくいとか、商品が多すぎてどれかわかりづらい、などUIが悪いと結局購入に到らず、途中離脱、コンバージョン率が上がらない、という残念な結果にもなりかねません。「○時までなら〇割引き!」といった誘い文句などとともに抜かりなく戦略を練りましょう。
事前告知が必要
ライブコマースを行う場合は、時間帯や配信するURLなどの情報などを事前に告知する必要があります。SNSや自社サイト、YouTubeなどの動画サイトを使ってより多くのユーザーの目に触れるように拡散しましょう。
まとめ
ライブコマースについて、基本的なことと重要視される理由とメリット・デメリット、また導入時の留意点についてお伝えしました。
ライブコマースは今後ますます需要が高まるでしょう。初期費用が少ないうえ、好きなタイミングで配信できるので、商品の売れ行き状況や季節などによって、自由に配信方法もアレンジできます。一度に大勢のユーザーではなく、その商品が欲しいとか、本当に興味がある、というターゲットにピンポイントに訴えかけなければ、今の時代はなかなか売り上げが伸びません。そのツールとして、ライブコマースはうってつけでしょう。ぜひ上手く活用して、収益アップを確実に実現させてください。
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