日を追うごとに仮想通貨の存在感が増していますが、購入した経験がない方からすると、法律や税金の問題が気になるかもしれません。そもそも仮想通貨は法律で認められたお金なのでしょうか。仮想通貨で儲かった場合は、納税義務があるのでしょうか。また、どの様なことに違反すると処罰されるのでしょう。
仮想通貨をめぐっては、詐欺事件やマネーロンダリング(資金洗浄)に関するニュースが報じられることがあるため、どことなく怪しいとか怖いといった印象がぬぐえないかもしれません。
そこで今回は、仮想通貨の法律上の解釈や困った時の対処法、また仮想通貨に関する税金や税額、さらにその計算方法について解説します。
仮想通貨は法律で認められているの?
仮想通貨は、正式には「暗号資産」と表現されますが、世界的に共通した定義はなく、
その解釈や法律上の扱いは国や地域によって様々です。国内では、法律上、法定通貨「円」とは切り離されており、いわゆる「お金」としては認められていません。
法定通貨は政府が価値を保証している強制通用力をもった紙幣や貨幣のことです。強制通用力とは、経済取引をするうえで受け取り手は拒否できない効力を意味します。給与や納税、買い物や飲食の際の料金など、日本であれば強制通用力のある「円」での受け取りを断れません。
一方の仮想通貨は、多くの場合、発行者や管理者が存在せず、法律的にも国際的にも、誰もその価値を保証する者がいません。もちろん法定通貨のように強制通用力を付与されていないため、お店なら客が仮想通貨で支払うことを望んでも拒否することができます。逆に両者が合意のうえなら仮想通貨での支払いは可能です。ただし、振込先を間違えてもいったん支払ったものは取り返すことができず、自己責任。犯罪の疑いがあるからといって、国はその人物の仮想通貨口座を凍結することはできません。
2010年前後あたりからブロックチェーンの存在が台頭してきましたが、その多くは仮想通貨を運用・取引するのが目的でした。前例のない存在に各国とも対応が追い付かず、とくに法律上の扱いは曖昧で、その間隙をぬうようにして詐欺やマネーロンダリングが多発しました。日本政府もその状況を無視するわけにいかず、2017年に「改正資金決済法(通称:仮想通貨法)」を施行し、仮想通貨の定義や取引所開設にあたっての法的義務などについて定めました。それまでは、仮想通貨は「物」のような扱いで、購入した際は消費税が課せられていましたが、同法律により「支払手段」として定義づけられたため、消費税については非課税扱いとなりました。
改正資金決済法で規定されていること
2017年4月1日に施行された「改正資金決済法」で定められたことは、主に、「仮想通貨の定義」「仮想資産交換業の定義」「仮想資産交換業の規制」についてです(2020年には正式に仮想通貨から「暗号資産」の呼び名に変更されました)。
仮想通貨(暗号資産)の定義の概要は、「不特定の者に対して物品の購入や仮受けなどの代価弁済のために使用でき、コンピューターを使って記録、発行可能で法定通貨ではないもの」というものです。
さらに、仮想通貨(暗号資産)を継続的に売買・交換したり、媒介・取次・代理をしたり、利用者の金銭や仮想通貨を管理する場合は、「仮想通貨(暗号資産)交換業者」としての登録義務が課されました。これに違反すると最大で3年の懲役か300万円の罰金のどちらか、あるいは両方が科さます。加えて、登録には、「資本金が1000万円以上」「純資産額がマイナスでない」という条件が必須とされました。
さらに、仮想通貨(暗号資産)交換業者には、健全な運営のために、情報提供義務やセキュリティ対策、監督規制、マネロン(マネーロンダリング)規制などの各種規制がかけられました。
トラブル時の補償は期待できない?
上記の規制により、仮想通貨(暗号資産)交換業者に対しては、詐欺やハッキングリスクを回避するために様々な対策をとるように促されています。例えば、取り扱う暗号資産の概要や価格変動による損失が生じる恐れがあるときは、その旨や理由を説明する義務があります。サイバー攻撃を避けるためのセキュリティ対策も怠ってはなりません。
しかしこれらは、説明や対策をしたからといって、実際にリスクを回避できるというわけではありません。それは、株や債券などの証券取引の場合と同じです。よって、もし暗号資産の価格が急落して多大な損失が生じたとしても、仮想通貨(暗号資産)交換業者が損失補てんしてくれるわけではありません。事前にリスクに関する説明があったとしたら、完全に自己責任となります。説明責任を果たしていない場合は、その限りではなく、場合によっては、監督官庁による立ち入り検査、業務改善命令、登録抹消の対象となることはあります。かといって、損失が補てんされるか、といえばその可能性は極めて低いと考えるのが妥当でしょう。
仮想通貨(暗号資産)交換業者がハッキング被害に遭い、預けていた財産が失われた場合にそれらが返還されるかどうかは、ケースバイケースです。有名な事例に、「コインチェック事件」があります。
2018年1月、仮想通貨(暗号資産)交換業者大手のコインチェックへの外部からの不正アクセスにより、約580億円分の仮想通貨(暗号資産)NEM(ネム)が流出しました。返還は非常に困難といわれていましたが、コインチェックは約26万人の顧客に被害総額の9割にあたる460億円を自己資金で返還しました。ただし、今後同じような事件が起きたとして、同様に補償されるかどうかは、不透明です。
ブロックチェーンによりすべてのアクセスは記録されるため、どのアドレスから不正アクセスがあったかは容易につきとめることができます。数々の不正事件を経て、業界全体でもリスク管理技術が進んでいるのも事実です。したがって、コインチェックのような莫大な損失を生む被害は起こりにくくなっているとも言えるでしょう。しかし、その可能性はゼロではないので、仮想通貨(暗号資産)取引には、少なからずリスクがあることを認識して自己防衛するのが基本であることに変わりはありません。
困ったらホットラインを使おう
金融庁は多発する暗号資産に関するトラブルに巻き込まれないように注意喚起しています。
困った時のために主に3か所の相談窓口を推奨しています。
・金融サービス利用者相談室(暗号資産に関する相談)…0570-016811
・消費者ホットライン(不審な電話などを受けた場合)…局番なしの188(いやや)
・警察相談専用電話(#9110)または最寄りの警察署まで
仮想通貨に関する税金
続いて、仮想通貨に関する税金について解説しましょう。
個人が仮想通貨取引を行ううえで課される税金は、所得税と復興特別所得税(東日本大震災の復興施策として2013年から25年間課税されます)、住民税です。具体的には、仮想通貨の取引を通じて年間20万円以上の利益を得た場合に、雑所得とみなされて所得税と復興特別所得税が課税され、住民税は利益額に関係なく一律で10%課税されます。
所得税の税率は、「累進課税率」という形で所得に応じて5%~45%までの7段階に分けられています。仮想通貨取引で所得と見なされるのは、「仮想通貨を売却して得た利益」「仮想通貨で商品購入した際の利益」「他の仮想通貨を自身が保有する仮想通貨で購入または交換して得た利益」の3つです。
以下に具体的な計算方法をご紹介しましょう。
仮想通貨に関する税金の計算方法
仮想通貨の取引で課税対象となる所得金額は、以下のように全7段階に分かれています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
仮想通貨取引で課税対象となる所得は、上述の3つの利益の合計になります。
つまり、
仮想通貨を売却して得た利益=売却金額―(1通貨あたりの取得価格)×(支払い仮想通貨数)→所得金額①
仮想通貨で商品購入した際の利益=商品価格―(1通貨あたりの取得価格)×(支払い仮想通貨数)→所得金額②
他の仮想通貨を自身が保有する仮想通貨で購入または交換して得た利益=他の仮想通貨の購入価格―(1通貨あたりの取得価格)×(支払い仮想通貨数)→所得金額③
(売却も取得も、その日の為替レートの日本円を基に計算されます)
以上の所得金額①②③の合計から必要経費を引き、そこから所得控除を引いた額が「課税される所得金額」となります。
この「課税される所得金額」に上記の表の該当する税率を掛け合わせて同表右端の「控除額」を引くと所得税額が算出できます。この所得税額の2.1%(0.021を掛け合わす)が復興特別税となります。
仮想通貨の取引で税金がどれくらいかかる?
仮に仮想通貨の取引で年間に100万円の利益を得たとしましょう。それ以外の所得金額が500万円、所得控除額が30万円の場合、
(100万+500万―30万)×0.2(税率)―427,500(控除額)=712,500円→所得税
復興特別税が、712,500×0.021=14,962(小数点以下切り捨て)円
住民税が、(100万+500万―30万)×0.1=570,000円
以上3つの金額の合計1,297,462円が所得税、復興特別税、住民税の合計額となります。
このケースの場合、全所得に対する仮想通貨取引による利益の割合は6分の1になるので、単純に算出すると、仮想通貨に関わる税額は、約22万円となります。
もちろんこの税額は、仮想通貨で得た利益額やその他の所得額、さらに所得控除額が異なれば、大幅に違ってきます。
まとめ
仮想通貨に関する法律や税金について詳しく解説しました。
今や仮想通貨は数千種類におよび、その存在感は大きくなる一方です。日本の取引所で直接取引できる仮想通貨は限られていますが、今後飛躍的に増加していくと考えられます。それとともに仮想通貨に関する法律や税金は、より一層身近なテーマとなるでしょう。
仮想通貨の世界は日進月歩で、毎日のように新たなサービスが提供されているため、それに合わせて法律や税金面での解釈や扱いも変化していく可能性が十分にあります。これから本格的に仮想通貨取引やNFTの収集・売買を考えるなら、その動向にしっかりと注目しておく必要があるでしょう。
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