長らくゲームやエンタメがけん引してきた仮想空間の世界に、大きな地殻変動が起ころうとしています。その主役となるのが「メタバース」です。
仮想空間とブロックチェーンとの融合により、すでにメタバースは、NFTの販売やNFTゲームによる収益化を可能にし、さらには仮想空間で土地を購入し、都市を築き、ギャラリーやライブハウスを建設することで、様々なイベントやコミュニティの開発・発信を行う中核拠点と化しています。
さらに、デジタル世界により実用的で収益性に富んだインパクトのあるイノベーションを起こすべく、「MetaFi」という新しい概念が誕生しています。ポイントは、「メタバースと金融の融合」です。
今回は、まだ聞き慣れない方も多いであろう「MetaFi」について、基本的な知識や注意点を解説します。
MetaFiとは
「MetaFi」とは、「Metadata(メタデータ)」と「DeFi(ディファイ)」を足し合わせた造語です。あらゆるデジタルデータを使って開発された、ブロックチェーン上で取引可能なコンテンツやプロダクトを、(ブロックチェーンベースの)分散型金融(DeFi)を使って、生産性と収益性の高い存在としてチューンナップしようとするイノベーティブな概念のことです。以下に詳しく見ていきましょう。
デジタル通信の世界は、インターネット創世記のWeb1.0、SNSを中心にインタラクティブな通信が広く可能となったWeb2.0を経て、いよいよブロックチェーン技術による分散型のサービスが本格化し始めたWeb3.0のフェーズに突入しました。周知の通り、ブロックチェーンの発展と普及は、暗号資産なくして語れません。
ビットコインに代表されるように、もともと暗号資産の機能といえば送金と決済のみで、その存在意義は、値上がりを期待する投機筋の投資対象としてが、大半でした。そこに一石を投じたのが、イーサリアムです。スマートコントラクトを組み込んだアプリケーション開発を可能とするイーサリアムが登場すると、ブロックチェーン経済圏の風景は、Web3.0への移行に向けて一変していきます。
イーサリアムブロックチェーンを基盤に、代替不可能なトークンによってデジタルデータに唯一無二性の所有権を付与できるようになった「NFT」。そのNFTを活用したゲームは、プレーしたり、キャラクターを売ったりすることで収益が得られるという画期的な「GameFi」を生み出しました。さらに、SNSのフォロー数や発言の影響力によって報酬が発生する「SocialFi」、仮想空間でアバターを介してあらゆる経済活動をリアルからバーチャルにコピー、またアレンジしながらイノベーティブにシフトさせようとする「メタバース」。これらの一見セパレートされたかにみえる様々なプロジェクトは、イーサリアムの作り出した「DeFi(分散型金融)」をキーとしてつながります。
DeFiは、銀行や証券といった従来の中央集権的存在を介さない次世代型の金融プラットフォームです。このDeFiインフラを提供して、上記のようなイーサリアムブロックチェーン発信のサービスやプロダクトを、より低コストでユーザビリティに富んだ収益性の高いものに成長させたり、シームレスに連携・融合させたりして、新たなパラダイムを開拓しようとするのが、「MetaFi」のコンセプトです。
MetaFiを理解を深めるキーワード
MetaFiは、あくまで概念であって、まだ明確な形が存在するわけではありません。しかし、今後形成されるであろう世界観について想像がしやすくなり、理解を深めるためのキーワードを順にご紹介しましょう。
分散化
MetaFiを理解するうえで欠かせないのが「decentralized=分散した」という考え方です。この言葉は、「DeFi(分散型金融)」や後述する「DAO(分散型自律組織)」など、イーサリアムを基盤としたシステムやプラットフォームの頭文字に多用されています。非中央集権的と言ってもよいでしょう。
従来の組織といえば、国なら政府、会社ならCEOや役員、金融システムなら銀行や証券などの金融機関、という具合に、中央集権的管理者が存在するのが当たり前でした。ところが、ブロックチェーンは、中央集権的なクライアントサーバーが存在せず、P2Pで複数のノードにサーバーが分散し、すべてのデータは各端末が管理する、「非中央集権的」メカニズムが大きな特徴です。
すべての取引はブロックチェーン上に記録され、全ノードの承認がなければ修正や削除ができないため、改ざんができません。この堅牢性を強みとしてブロックチェーンを利用した分散化は、管理者不在の形で個人が自分の情報を自らの手で管理・活用することを可能にします。その際には仲介者がいないために、手続きを簡素化したり、手数料を安くしたりできる利点もあります。これが「Web3.0」の世界です。
「分散化」という概念を念頭において、以下のキーワードについての解説に目を通すと、「MetaFi」のイメージが湧きやすくなるでしょう。
メタバースとDAO(分散型組織)
メタバースでも、すでに分散化の考え方が浸透してきています。その格好の例が、「Decentraland」というVR(仮想現実)空間プラットフォームです。Decentralandは、イーサリアムブロックチェーン上で稼働するメタバース・NFT融合型の「DAO」です。DAOは、「分散型自律組織」のことで、特定の管理者は存在せず、すべての取引はイーサリアムのスマートコントラクトによって自動運営されます。
Decentralandでは、登録したらMANAという専用のERC-20トークンを使い、アバターとなって「ランド」を購入。これを活用して、仮想空間内で様々な社会・経済活動ができるようになります。ランドは売買が可能で、高いものなら1億円以上の値がついた例もあります。
ランドに博物館やギャラリーを建設し、そこにNFTアートを展示、オークションにかけて販売することも可能です。ライブ会場でバーチャルライブを開催し、そのアーティストの衣装やグッズをNFT化して売る例もあります。
さらにDeFiを融合させれば、上記のようなNFTを担保にして融資を受け、流動性マイニングやステーキング、売買などを通じて資産を増やすこともできます。これが、「MetaFi」の一例といえるでしょう。
参考:メタバース(Metaverse)とは?注目されている理由や実例・今後の動向を詳しく解説!
DAO(自律型分散組織)とは?メリット・デメリット・次世代型新組織と言われる理由を徹底解説!
GameFi
NFTゲームでは、ゲームをしながら独自トークンを手に入れたり、キャラクターやアイテムをNFTとして売ったりして収益化することができ、これを「GameFi」といいます。従来のゲームは、プレーヤーが楽しむのみで、課金することはあっても、プレーすることで報酬が得られるということは考えられませんでした。イーサリアムのスマートコントラクトを活用すると、これが可能となるのです。
しかし、NFTゲームを始めるにはまず専用のトークンを購入する必要があります。これには20万円近くかかる例もあり、そもそもある程度資金に余裕がなければプレーすらできません。ただこの場合も、DeFiを使った融資によってトークンが購入できれば、初期費用の心配なくゲームをスタートすることができます。現に、東南アジアでは、学費を稼ぐために、富裕層からDeFiを通じて奨学金を支給してもらい、GameFiで利益が出れは折半するという若者が少なくありません。
これも「MetaFi」の一例であり、拡充すれば、貧困や教育格差の解消に一役買うことができるかもしれません。
ちなみに、イーサリアムブロックチェーンを基盤としたDEX(分散型取引所)では、だれでも本人確認なしで暗号資産の直接取引が可能です。世界には貧困などが理由で口座が持てない人が約25億人いると言われますが、DEXならそのような立場にある人たちにも、資金調達のチャンスが広がります。DEXもDeFiの一種です。これもまた、イーサリアムを利用した分散化の一例であり、調達した資金でNFTを販売したりGameFiに注力したりできれば、MetaFiにつながる一要素となるでしょう。
SocialFi
SNSで影響力のある発言やコンテンツをトークン化し、その発信者に報酬を与えるというパターンを例とする、ソーシャルとWeb3.0、そしてDefiを融合させたエコシステムを「SocialFi」といいます。現状では、GAFAMのような巨大テックにシステムを利用する代償として、相当額の手数料を支払ったうえ、大量の個人情報を提供しています。この牙城を崩そうとするのが、ブロックチェーンを使った、情報の分散化による個人管理、の考え方です。
巨大な管理者のタガが外れれば、個人に権利や権力が分散されます。システム使用料は不要となり、個人が企業から仲介者なしで、DeFiを通じて直接広告料や報酬を得ることも可能となるでしょう。そうなれば、情報の搾取が回避できるばかりか、相当の高収入が期待できるようになるはずです。これも「MetaFi」の目指す世界観といえるでしょう。
MetaFiの注意点
「MetaFi」が現実に普及していけば、デジタルの世界に大きな地殻変動が起きるのは間違いないでしょう。しかし、そこには注意すべき点もあります。
ハッキングリスクがある
DeFiのスマートコントラクトはバグが発生することがあり、その脆弱性を突いたハッキング被害を受けるリスクがあります。また、MetaFiの経済圏では、少なからず暗号資産を使うことになるので、暗号資産取引所がサイバー攻撃を受けると、暗号資産を失う恐れもあるでしょう。
暗号資産取引については法整備が追い付いていないのが現状のため、何らかのトラブルが生じても自己責任となる可能性が否定できません。
暗号資産の影響が絶大
MetaFiは、イーサリアムを主とした暗号資産をベースとして成り立つのが大前提です。もし、イーサリアム関連の暗号資産が暴落すれば、MetaFiも多大な影響を受けることになるでしょう。
2021年のNFTとDeFi市場は、バブルともいえる沸騰ぶりが大きな注目を浴びました。とりわけ、同年秋にFaceBookが社名を「メタ」に変更し、ソーシャルからメタバースへの本格的なシフトチェンジを表明した直後に、NFT関連のトークンやメタバース関連株が明らかな高騰を見せたのも印象的です。その筆頭がイーサリアムでした。
しかし、アメリカの利上げによる金融緩和政策の終焉やロシアによるウクライナ侵攻など、市場をかく乱する不安定要素は少なくありません。現に2022年に入り、ビットコインもイーサリアムも前年にマークした最高値に比べて4割以上値を下げる局面がありました。
イーサリアムが下落すれば、多くのNFTの資産価値も下がるので、メタバースやGameFiにも間違いなくその余波が押し寄せます。それを受けて、さらにイーサリアムの価格が下がる、という負のループには十分な警戒が必要でしょう。
まとめ
イーサリアムは、今や暗号資産市場の成長に欠かせない存在です。そのポテンシャルをさらに引き出してイノベーションを起こす、と期待できる概念として、「MetaFi」は大いに注目に値します。
分散型の金融システムをテコとして、ソーシャル、ゲーム、エンタメ、アートの分野でも分散型で自由度の高いアクションが可能となれば、MetaFiの世界観は、確実に広がっていくでしょう。それは、さらに貧困の解消や、教育の機会均等といった持続可能性の開発にも寄与するかもしれません。
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